課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「私、おじさんに恩があるんです。
 だから、どうしても、このお見合い、成功させないと」
と思い詰めたように彼女は言ってくる。

「私、このお見合い、断られたら死ぬしかありません!」

 羽村は、
「じゃあ、死んで」
と通り過ぎようとして、

「人殺しー!」
と叫ばれた。

 なんでだっ!? と思いながら、人聞きの悪いセリフに足を止め、慌てて周囲を見回す。

 すると、彼女は自分が逃げないようにか、ちんまりコートの後ろをつまんできた。

 うつむいて瞳を潤ませるその姿に、ちょっとどきりとしなくもないが、言ってくることはロクでもない。

「だって、おじさんに殺されますー」

「殺されたり、死んだり大変な見合いだな……」
と羽村は呟いたが。

 だが、なんとなくわかって来たぞ、と思っていた。
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