課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「ああ、ありがとうって言ったからって、次の話はいらないからね」
と言って、今度は本当に切った。

 自分の息子を過大評価しすぎた、この親は、と思っていた。

 こっちは好きな人にも全然相手にされてないのに、とは思うが。

 そんな風に思ってくれる親を可愛いなとも思っていた。

 しかし、いつから、親を可愛いとか思うようになったかなー、と不思議に思う。

 昔は、親って絶対的な存在で、いつも何処か恐ろしかったのに、と考えていたとき、受付の警備員と話していた若い社員が二人、彼女の方を見ているのに気がついた。

「お、可愛いじゃん、あの子」
「なにしてんのかな?」

「彼氏待ちじゃない?」
「ずっと下向いて、行ったり来たりしてるから、なにか落し物かもよ」

「じゃ、お前、話しかけてみろよ」

「えーっ。
 なんか見るからに、お嬢様って感じじゃん。

 ちょっと話しかける勇気ないな~」
と言っているのが聞こえてきた。
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