課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 ほら、謎の女。
 お前、モテてるじゃないか。

 僕なんかと見合いしなくてもいいじゃないか、と思っていると、真後ろでよく通る声がした。

「なんだ、あの不審者は」

 振り返ると、雅喜が立っている。

 目を細め、彼女を見ているようだった。

「あんな格好で寒くないのか」

 みんながあの子可愛いとか、声かけてみようかと言っているのに、この人の感想はこれか、と思いながら、

「あれが、僕の見合い相手ですよ」
と教えると、

「そうか。
 いいじゃないか。

 ――俺の好みじゃないが」
と付け加えながらも一応、褒めてくる。

 いや、貴方、今、なんだ、あの不審者はって、言ってましたよね。

 その褒め言葉、まったく心がこもっていませんが……。



< 32 / 138 >

この作品をシェア

pagetop