課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「そんな薄着だから、寒いんだよ」

 そう言って、首に巻いていたマフラーを外し、彼女にかけてやると、彼女は少し赤くなった。

 巻かれたマフラーに手をやり、
「……あったかいです」
とうつむきがちに呟く。

「すごくいい匂いがします」

「ああ、真湖りんもそういうねえ」

「真湖りんって、誰ですか?」

 そんな話をしながら、なんとなく並んで、駅へと歩き出した。




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