課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~

 


 駅まで送っていく、と羽村は彼女に言った。

「いえ、そんな大丈夫です」
と彼女は言うが、

「いや、心配だから」
と羽村は答える。

 いや、心配だから。

 そして、不安だからだ。

 このまま家までついてきそうで……、と羽村は思っていた。

「そういえば、僕、何時に終わるかわからないのに待っててくれたの?」
と訊くと、はい、と言う。

「もしかして、学生さん?」
と羽村は訊いてみた。

 どうも働いてる風には見えなかったからだ。
< 36 / 138 >

この作品をシェア

pagetop