課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
やっぱり、好きですっ ~雪乃~
あ、おじさん来てる――。
毎日、あとを付け回しては、羽村さんも迷惑だろうと、その日、雪乃は大学から真っ直ぐ家に帰ってきていた。
部屋に荷物を置いて、リビングに行こうとしたとき、一階から母と話す伯父、隆雄の声が聞こえてきたのだ。
伯父のお陰で維持出来ている、父親の建てた大きな家の階段を下り、広い玄関ロビーに出ると、隆雄がこちらを見上げ、言ってきた。
「帰ってたのか、雪乃」
いつもダンディな伯父は、顔立ちは父親と似ているのだが。
顔つきがいつも厳しいせいか、受ける雰囲気は全然違っていた。
それでも、雪乃は、この伯父が嫌いではなかった。
母親は、夕食の支度をしにか、キッチンに引っ込んでしまったようで、そこに居るのは隆雄だけだった。
「雪乃、この間言った見合いだが」
どきりとしながら、はい、と言うと、
「あの話、なしになったから」
と言ってくる。
えっ、と雪乃は最後の段を下りないまま、手すりをつかむ。