課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「羽村の息子、会社を辞めるかもしれないそうじゃないか。
 まだどうなるかもわからん友人の会社に移るとか。

 一流企業で、ぼちぼち出世できそうだと言うから、お前に勧めたが」

「で、でも、おじさんっ。
 おじさんは、羽村さんのお父様とつながりを持ちたかったのでは?」

 ああ、と隆雄は眉をひそめる。

 雪乃が側に行くと、

「まあ、親戚になれるのなら、それもいいかとは思っていたんだが。
 結婚後、お前が苦労するようなら、この話はなしだ」

 そう言いながら、隆雄は子どもの頃のように、雪乃の頭をなでてくる。

 マジマジと雪乃を見ながら、しみじみと言ってきた。

「……莫迦な子ほど可愛いって言うが、ほんとだな」

 いや、ちょっと、伯父さん……と雪乃が思っていると、隆雄はふと気づいたように言ってくる。

「お前、今、羽村さんのお父さんと言ったが、羽村の息子に会ったのか?」

 さすが聡い隆雄は、雪乃の話し方のニュアンスで気づいたようだった。
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