課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 困った子だね、と言いながら、自分を見下ろす羽村さんも。

 迷惑そうに言いながらも、送ってくれたり、珈琲淹れてくれたりする羽村さんも。

 真湖りんさんを微笑みながら黙って見つめている羽村さんも――。

「羽村さんが私のことなんか好きじゃなくても。
 でも、好きなんです」

 黙って、雪乃を見下ろしていた隆雄は、……うん、そうか、と頷く。

 雪乃の頭をポンポンと叩いてから言った。

「おじさんも、お前のお母さんが好きだ。
 なんだかわからないが、好きだ。

 ……悪い女なんじゃないかなと思うときもあるが好きだ」
と物思うように付け加える。

 そのとき、あれっ? と思った。

 みんな、いきなり父親が消えて、この伯父が面倒を見てくれ始めたとき、伯父が父をどうかしたんじゃないかと噂したようだが――。
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