課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 五嶋海(ごとう かい)
 語呂的にも悪くないが、なんで海の字なんだろうな、と思ったのだ。

「いや……、式場が海の側だったし。
 しまなみを渡って、四国に行って、釣りをして、初めて真湖りんと呼んで――」

 いや、そこは呼ばなくてよかったんだが、と雅喜は言ってくる。

 だが、その雅喜の脳に焼きついていた真湖りんのおかげで、婚約することになったわけだが。

「ともかく、出会ってから、ずっと海が関係してるなと思って。
 宮島にも何度か行ってるしな」

「そうですねー。
 でも、なんか、ストレートに海でカイって課長にしては珍しい気が――」
と言うと、雅喜は、いや、いろいろ考えたんだ、と言ってくる。

「海に一斗、二斗の斗で、海斗(かいと)とか」

 いい名前だけど。

 一斗、二斗とか言われると、すごい重い赤子になりそうで怖いんですが。

「海に音で、海音(カイン)とか」

 格好いいけど。

 生まれながらに罪を背負ってそうですが。

「海に月で海月(みづき)とか」

 可愛いけど。

 その字だと、どっちかというと、クラゲな感じが。
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