課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~


「かいー」
 などと可愛らしく呼んでみている真湖を見ながら雅喜は満足していた。

 真湖が気に入ってくれたらしいことにも。

 そして、真湖が気づかなかったことにも――。

 式場が海の近くだとか。

 旅行先がとか、そんなのは後付けだ。

 いや、そういうイメージが自分の中にあったことは確かだか。

 (かい)の名前が海になったことには、別の理由がある。

 海という名前は、真湖的にもしっくり来たようで。

 真湖は、
「かいー」
と呼びながら、機嫌よく子どもを抱き歩く。

 だが、ふと思い出したように、真湖はベッドを見て、言い出した。
< 92 / 138 >

この作品をシェア

pagetop