触れたら、痛い。

「じゃ、入るから。」

男がそっと私の汗ばんだ肩に手を回す。
かつてこんな触れ方を、されたことが無い。

私は今からどうなるのか。
ビルが私を飲み込むのか、この肩に置かれた男の手が、ひやりとしているのか、熱を含んでいるのかも分からない。

「ねぇ、私あんたに殺されるわけ?」

思考の沼に引きずり込まれそうで、声が震えないように問いかける。

「あぁ…。それも、いいな。」

「いいわけあるか…!」

8センチのヒールを履いていても、私より背が高く、逞しいこの男から逃げられるのか考えてみたが絶望的だ。

どうせ殺されるなら、一回ヤってからがいいな。我ながら、つくづく場末の女だなぁと思いながら歩みを促されたまま進めた。
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