不機嫌な彼と恋のマジックドライビング
「片瀬さん、余計なこと言わないでくださいよ。

俺…

男に囲まれてちやほやされてる女には興味ないですから」

冷たい視線に暖かかった心が一気に凍りつく。

それはいつもの香田さんだ。

昨日ちょっとだけ見せてくれた笑顔は気のせいだったのだろうか…?

あの優しい彼は何だったのだろう?

もしかしてちょっとだけ、私は香田さんに特別扱いしてもらったのかな…
なんて勘違いして受かれていた自分が恥ずかしくなってうつむいた。

「…車内に貴重品とかないよな?」

香田さんの言葉に顔を上げると、少し鋭い視線が私を見つめていて、一瞬怯みかけたが、私は大事なことを思い出して意を決してその目を真っ直ぐ見つめなおした。

「あっあの昨日はどうもありがとうございました。
本当にすっごく助かりました。
あの…助手席に紙袋があります。
昨日のお礼です。
違ってたらすみません。

甘いものが好きだって聞いたことあったのでお菓子入ってますから食べてください。

えっと…車宜しくお願いします」

ペコリと頭を下げると目の前の香田さんの顔が少しだけほころんで、ふっと見逃すくらい微かに一瞬だけ笑った…。

「…きぃ使わなくていいのに。
ありがとう。遠慮なく貰う」

ぼそりと答えた香田さんはいつもの無表情な顔で無愛想にそう言い残してそのまま事務所から出ていった。
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