不機嫌な彼と恋のマジックドライビング
「はい。蓮見ちゃん車のキー。
で、礼は俺じゃなくてこいつに言ってやって」

片瀬さんは私にキーを手渡すと、バインダーをもってショールームの御客様のところへいってしまった。

「香田さん…」

恐る恐る名前を呼ぶと香田さんが私と視線を合わせた。

「あの、いろいろありがとうございました」

「いいよ。
仕事だから。それに、お礼…うまかった。ありがとう」

微かに微笑んだ香田さんに、私はまた分かりやすいくらいに真っ赤になった。

至近距離の大好きなイケメンの笑顔は破壊的だ。

心臓が壊れるんじゃないかと思うくらいに、ドキドキして胸が痛い。

「…すぐ顔に出しすぎ…。

こんなとこでさっきからそんな顔するな…」

香田さんの顔がすぐに不機嫌になった。

「そっそんな顔ってどんな顔ですかっ!」

「…みんなの前で見せちゃいけない顔だ」

背の高い香田さんが少し屈んで耳元で囁く。

耳に吹きかかる息にますます赤くなり

「こっ、香田さん!
からかわないでください…」

少し潤んだ目で見上げると、私の腕を掴みそのまま外へ歩きだした。


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