不機嫌な彼と恋のマジックドライビング

「終わった。
とりあえずスペアーはかせたから、明日朝イチで注文入れれば夕方には届く。フロントの片瀬さんにでも出勤したら連絡するといい。

走りづらいから気を付けて帰れ｣

あっという間に作業を終えた香田さんは、立ち上がると私に視線を合わせてぶっきらぼうにそう告げた。

「すごい！もう終わった！
ありがとうございます！｣

一人でどうしようかと思っていた私にとって、颯爽と現れて助けてくれた香田さんはまさにヒーローだ。


深々と頭を下げて

「スパイダーマンみたい…｣

と呟いた声が耳に届いた彼がくしゃりと表情を崩してフッと優しくわらった。