-先生きいて?-
はじめての先生と二人っきり。
あたしは心がめいっていたので
なにも話したくなかった。
でも、なんかこの車の香り…
落ち着く。
さわやかな芳香剤の香りと
ラジオから流れてくる音。
そしてなにも喋らないあたしと
せんせい。
でもその沈黙を破ったのは先生だった。
『樋口、大丈夫か?』
「は、はい、大丈夫です。」
『かなり心配なんだけど。』
「かなり怖かったです。」
『そうだよな、思い出したくないべ?』
「できれば…はい。」
『じゃ、夕日見に行くか?』
「は、はい。」