クリスマスの夜に、ただ一つの願い事を

予報外れの冷たいにわか雨が空からぽつりぽつりと振りだす。


向きを変えて帰ろうとする女の子の細い腕を握り引き留める潤。


驚いた顔をして振り向く女の子。


潤は自分が持っていた折り畳み傘をその女の子に差し出した。


何度も手を横に振って断っている女の子。


制服濡れながら強引に傘を渡す潤。


深くお辞儀をして、傘を開いて走っていく女の子。


潤が小さくなっていく女の子の姿を見守るようにずっと見ている。


──潤、あの女の子は、誰?


潤の様子が最近急に変わったのは……、あの女の子のせい?


もしかして、あの女の子、潤の好きな人……。


だったら、だったら──


なんだか、悲しくて、


まだ、はっきりした事実が確定していないのに、


頭も心も動揺をして、


胸騒ぎを勝手に始める私のこの胸元


手をあてると


心臓が私の意思とは関係なく早く鼓動を打っている


苦しい、苦しい、あぁー、もう………………。


やっ、やだなぁ。


涙が出てきた。


泣くはずなんかじゃなかったのに。


今、凄く、気づいた──。


私が本当に大好きな人は、潤だったんだ……。


どうして、もっと早く、潤に自分の素直な気持ちを伝えなかったんだろう……。


真依が空を見上げる。


私の知らないうちに──、潤はあんな可愛い子を見つけちゃって。

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