クリスマスの夜に、ただ一つの願い事を
潤だって、もう高校生だもんね。
小さかった頃のままの潤じゃない。
そりゃ、潤も、好きな子できるよね……。
私は、素直じゃないし、頑固な女の子──。
まだ、降りやまない、にわか雨。
私の泣いている顔、どうにか雨でごまかせないかな。
4月に潤に告白をされた言葉が段々と風化されていく。
『真依が好きだ──』
──あの時、見た潤の顔は今まで見たことがないぐらい真剣な顔だった。
あーあ、もう、潤の顔をまっすぐに見られないや……。
雨にずぶ濡れの真依。
スカートのポケットに手を入れてプラスチックで出来たあの赤い小さな指輪をぎゅっと強く握りしめる。
潤が好きだから、強くなれる自分がいて。
でも、潤が好きだから、弱くなる自分もいる……。
潤がいつもそばにいることが、当たり前だった。
──それじゃ、もういけないんだ。
そう思った瞬間、今まで大切に持っていた小さな赤い指輪を流れていく川をめがけて思い切り投げ捨てた。
くるくると何度も早く回転をしながら赤い指輪が川の中へポチャンと入って沈んでいく様子を真依が寂しそうな顔をしながら眺めている。
その時突然、「何、やってんだよ──!」と大きな声で叫びながら真依の元に顔色を変えて全力で走ってくる潤の姿が飛び込んできた。
「──潤、」
肩にかけていた鞄を放り投げて、草原の斜面を滑り降り、何の迷いもなく川の中へじゃぶじゃぶと入っていく潤。
宝物だって、ずっと今まで持っていた物を──、
真依、どうして、そんなに簡単に投げ捨てたんだ?
──真依が投げ捨てた、小さな赤い指輪……。
大切にずっと持っていてくれた、赤い指輪、……どこなんだ、どこなんだ。