【放浪恋愛】アリョーナの旅路~ソッフィオーネを鳴らすまで
第1話
アタシはアリョーナ…
ハバロフスク中心部の女子大に通う19歳の少女です。
大学卒業後、なりたい職業は学校の先生です。
アタシの家族は、ハバロフスク市内で貿易商を営む父と母と一番上の兄(30歳)と2番目の兄(25歳)と次兄の兄嫁さん(34歳)の6人家族です。
一番上の兄は、父が経営している貿易商を手伝っていますが、お嫁さんはいません。
2番目の兄は、職場恋愛で知り合ったお嫁さんと結婚をしまして幸せイッパイであります。
時は、2011年5月9日頃でありました。
2か月前に日本で巨大津波を伴った大規模地震(東日本大震災)の影響で、父が経営している貿易商と取引をしていた東北地方の会社が壊滅的な被害を受けました。
顧客からの売掛金の回収が困難な状況におちいっていたので、苦しい生活を強いられていました。
そうした中で、わが家では頭の痛い問題を抱えていました。
一番上の兄にお嫁さんがいないので、父は毎度のように一番上の兄に問い詰めてばかりいました。
シーンは、わが家の朝の食卓にて…
テーブルの上には、ライ麦のパンとコンソメのポトフとハムエッグとグリーンサラダが置かれていました。
次兄の兄嫁さんは、マグカップにひとつずつチャイ(紅茶)を入れていた…
父は、多少あつかましい声で一番上の兄にこう言っていた…
「ヒメネンコ、お前はいつになったら嫁さんをもらうのだ!?」
「何だよオヤジィ…またその話かよぉ…」
父の言葉に対して、一番上の兄もまた多少あつかましい声で父に言い返した…
一番上の兄に言い返された父は、読みかけのロシア語の新聞をバサッとひざの上にたたきつけながら一番上の兄に言い返した…
「ヒメネンコは『そのうちに…』とばかり言ってるようだけど、もう何年間宙ぶらりんのままでいるつもりなのだ!?どうして、ヒメロフ(アリョーナの2番目の兄)のように自分から積極的に動こうとしないのだ!!」
「無理なことを言うなよ!!ヒメロフが職場恋愛でお嫁さんと知り合って結婚できたからオレも恋愛結婚しろだなんて、そんなこと無理だよ!!」
一番上の兄と父が大ゲンカを起こしていたので、紫色のTシャツにボブソンのジーンズ姿のアタシはのみかけのチャイをゴクゴクとのんだ後『ごちそうさまでした。』と言うたあと、席を立ってカバンを手にした後、大学へ向かいました。
ネイビーの背広姿の2番目の兄も『仕事に行ってくる。』と言うて、席を立ってカバンを手にした後、会社へ出勤しました。
アタシんちは、毎朝のように一番上の兄の結婚問題のことで父と1番上の兄がもめてばかりいるので、食卓の雰囲気がよどんでいました。
ところかわりまして、市内カールコルスク通りにあるアタシが通っている女子大にて…
時は、昼の2時頃のことでありました。
アタシが足早に大学の正門を出た時でありました。
この時に、市内にある医科大学の4回生のカレ・タメルランと出会いました。
「アリョーナ。」
「ハーイ、タメルラン。」
「ゼミ終わった?」
「うん、今終わったところよ。ねえ、どこに行く?」
「そうだなァ…どこに行こうかな?」
「タメルランに任せるわ。」
そしてアタシは、いつものようにタメルランと一緒に腕を組んでハバロフスク市内を歩いて、デートをしていました。
アタシとタメルランが出会ったきっかけは、1年前の2010年の夏にハバロフスク市内にある大学4校が合同で恋人のいない男女20人が集まって開かれた合コンの時でありました。
場所は、市内コムソモール通りにあるサッポロ(北海道料理のレストラン)にて…
みんなでワイワイとおしゃべりをしながら石狩鍋を食べていた時に、タメルランがアタシに声をかけて来ました。
最初は軽いおしゃべりから入って、いろんなことを話して行くうちにタメルランに気に入らました。
それからふたりは、お付き合いを始めたました。
この時に、タメルランはプーチンカ(ウォッカ・アルコール度40度)をのんでいまして、すっかり上機嫌になっていた…
カレは、3回目の『ダバーイ!!』(乾杯)を言うて、3杯目のウォッカをのんでいた…
タメルランは、3杯目のウォッカをストレートで一気にのみほして、すっかり上機嫌になっていた…
そんなタメルランは、アタシの顔を見て『アリョーナ…ぼくとお付き合いをしてほしい。』と言ってきた…
アタシは、タメルランの勢いに負けてしまった…
そこから、お付き合いが始まった…
2011年2月頃、アタシとタメルランは付き合って行くうちに、密かに結婚を意識し始めていた…
そしてふたりは、結婚に向けてアレコレと準備していたけど、その時に大きなかべにぶち当たってしまった…
タメルランは、北コーカサスのチェチェン自治共和国の生まれでありました。
カレの家は、アタシと結婚することには猛反対を唱えていた…
だけど、アタシはタメルランの家ご家族から結婚を反対されても、この愛を貫きとおして(つらぬきとおして)行こうと固く決心していた…
しかし、2011年6月頃にわが家で大事件が発生したことを機に、ふたりは引き裂かれて離ればなれになってしまった…
事件は、2011年6月11日に発生しました。
父が経営している貿易会社を手伝っていた一番上の兄が、顧客からの預り金3000万ルーブルを勝手に流用して、スッテンテンにしたあげくに、行方不明になってしまった…
一番上の兄は、嫁さんが来てくれないさみしさからサウナ(ここでは、ロシアの風俗店のことを言う)に出入りしているところをウラジオストク(またはウラジボストーク)にいる父の知り合いの人に目撃されていたことが発覚した…
一番上の兄は、15日前から様子がおかしくなっていた…
ウラジオストク市内にあるサウナ店に入り浸りになって、店の女のコに大金を貢いでいた…
父は、顧客から預かった3000万ルーブルをベンショウしなければならなかったので、キンサクに困っていた…
6月13日の夕食のことであった…
アタシは、父からいきなり『アリョーナ、お見合いの話を入れておいたから…』と言われたので、どうしてよいのか分からずにとまどっていた…
アタシのお見合い相手は、ウラジオストク市内にある海運会社の常務の御曹司(おんぞうし)のヤホースキーさんでありました。
ヤホースキーさんのお父さまは、これまで大切にしていた日本の陶器(とうき)の骨董品(こっとうひん)や株券やゴールドプレートなどを全部売却して4000万ルーブルを受け取ったあと、うちに送金して下さった…
4000万ルーブルを与える条件として、アタシが女子大を退学して、ヤホースキーさんと結婚すると言うことであった…
そんな…
あんまりだわ…
大学も、恋も順調でこれからだと言うときに…
なんで大学をやめて、好きでもない人とお見合いをして結婚しなければならないの…
アタシ、イヤ…
好きな人と結婚できないのであれば、結婚せずにキャリアひと筋を選ぶ方がいいみたい…
困り果てていたアタシは、父に対して『アタシが大学を卒業するまで結婚を待ってほしい。』と申し出た…
しかし、父は口をへの字に曲げましていやそうな顔をしてアタシにこう言うた…
「ヤホースキーさんの家については、過去にトラブルが発生した時に金銭的な援助をしてあげたのだよ…他にも、ヤホースキーさんの家に恩義があるのだよぅ…」
父は、ヤホースキーさんの家に恩返しができていないと言うだけなので、アタシのことは二の次三の次になっていた…
その一方で、アタシとタメルランが付き合っていると言うことについて、アタシの家族は全く気がついていない…
ヤホースキーさんは、これまでにお見合いを100回以上も断られてばかりいたので、気持ちがヒヘイしていた…
ヤホースキーさんが『ぼくは39歳でもうあとがないのだよぅ…』と言うてすごく焦っているから、アタシと結婚したいと言うてきた…
アタシは、ひ弱で女々しい性格のヤホースキーさんをべっ視していた…
6月18日に、アタシは家族と一緒にジェルジンスカヴァ通りにあるスニェジンカ(高級レストラン)へ行きました。
アタシたち家族は、ランチを摂りながらヤホースキーさんの家のひとたちと楽しくおしゃべりをしていた…
しかし、そんな中でヤホースキーさん本人が黙りこんでしまったあとつらそうな表情をしていた…
仲人さんの奥さまは、ヤホースキーさんにやさしい声で言いました。
「ヤホースキーさん、どうしたのかな?せっかくのお見合いなのだから、アリョーナさんとお話をしてみたらどうかな?」
「えっ?」
仲人さんの奥さまにやさしい声で言われたヤホースキーさんは、ますます困惑ぎみの声で奥さまに言うた…
「あのう…いっ、一体何からお話をすればよろしいのでしょうか?わっ、わからないのです。」
「何を話したらよいのかって…例えば、趣味の話とか…あと、ヤホースキーさんがアリョーナさんに聞きたいこととか…いっぱいあるでしょ…」
(チッ…)
ヤホースキーさんは、チッと舌打ちしたあと多少怒りぎみの口調で仲人さんの奥さまに凄んで行った…
「なっ、何なのですか一体!!ぼくはお見合いを頼んだ覚えはないのに、なんで勝手なことをしたのだ!!」
アタシは、ヤホースキーさんの言葉を聞いてムッとなっていたので、席をけとばしたあと外へ出て行った…
お見合いは、ヤホースキーさんが仲人さん夫妻に暴言をはいたことが原因でめちゃめちゃに壊れてしまった…
しかし、ヤホースキーさんの両親はアタシの家に電話をして『息子を30代のうちに結婚をさせてあげたい。』とアタシの父にコンガンしていた…
父は、ヤホースキーさんの両親の気持ちをくみ取って『ヤホースキーさんは、気持ちが迷っていたから分からなかっただけだよ…』とやさしく答えました。
その上で、双方の家が2011年7月23日に挙式披露宴を挙げましょうと言うことで、結婚式場に予約を入れてしまいました。
アタシの両親は、アタシが通っていた大学を中退する手続きを取ってしまったので、アタシは大学に行くことができなくなった…
この時、次兄の兄嫁さんも『アリョーナさんによく似合うウェディングドレスを見つけてあげるから…』と言うて張り切ってた…
ヤホースキーさんのおばさんたちもすっかりその気になっていて、ヤホースキーさんに細々と世話をやいていた…
同じ頃であったけど、タメルランもグロズヌイ(チェチェン共和国の首都)にいる父親から『母親が大病で倒れたから帰って来い!!』と言う知らせを聞いたので、大学を中退することになった…
タメルランはこの時、大学をやめてグロズヌイに帰ろうかどうしようかと迷い続けていた…
タメルランは、大学を卒業したらすぐにアタシと結婚することを決意していた…
なので、実家からの知らせを聞いたときには気持ちが動揺していた…
2011年7月22日、挙式披露宴にそなえて、ヤホースキーさんの家の親族のみなさまがウラジオストクから飛行機に乗りましてハバロフスクまでやって来ました。
ヤホースキーさんの家の親族のみなさまは、宿泊先のホテルに着いた後、個々の部屋で過ごしていた…
その日の夜のことでありました。
アタシは、タメルランとふたりでヂモーナ公園にて密会をしていた…
アタシは、白に黒のよこしまのキャミソールの上から白のブラウスをはおって、下はネイビーのデニムのスカートをはいていた…
タメルランはアタシに、グロズヌイに帰ることにしたと伝えていた…
「アリョーナ…オレ…グロズヌイに帰ることにしたよ…」
「タメルランも…大学をやめるの?」
「ああ…おふくろが…大病で倒れたのだよ…医者になろうと今日までがんばっていたのだけど…オヤジが大学をあきらめて、家に帰れ…グロズヌイで就職をしろと…うちには…おさないきょうだいがいるのだよ…オヤジが働けないから…オレが働いておカネをかせがなくてはならなくなってしまったのだよ…明日…列車に乗って帰ることにしたから…元気でな…オレのことはもう忘れて…オレよりもいい男と幸せになれよ…」
タメルランは、アタシにこう言うたあと、公園をあとにした…
タメルランと別れたアタシは、公園をあとにして、マスコーフスカヤ通りから少し道を外れた露地を通っていた…
その時にアタシは、派手なシャツを着たガラの悪い男ふたりに声をかけられてしまった…
アタシは、必死になって抵抗をしたけど、ふたりの男にはがいじめにされたあと、ひとけのないところへ連れて行かた…
「ちょっと…何をするのよ!!離して!!離して!!」
アタシは、ガラの悪い男ふたりに連れて行かれた後、行方がわからなくなってしまった…
それから三時間後…
アタシは、ふたりの男に力任せに押さえつけられて、口にさるぐつわをかまされたあと、ボロボロになるまで身体を犯されてしまった…
アタシは、カレと別れたことと親が決めたお見合い相手との結婚でギスギスしていた…
そのまた上に、見知らぬ男たちからオジョクを受けたので、心が大きく傷ついてしまった…
どうして…
どうして、こんなことになってしまったの…
悔しくて…
恥ずかしい…
アタシは、そんな気持ちを抱えたまま7月23日の挙式披露宴の日を迎えた…
挙式は、シベリア鉄道のハバロフスク駅の近くにある教会で挙行されます。
ヤホースキーさんの親族のみなさまは、チャペルにてにこやかな顔で挙式が始まるのを待っていた…
しかし、新婦の控え室にいるウェディングドレス姿のアタシは、気持ちがギスギスした状態で部屋から出ることができずにうつになっていた…
そんな時に、次兄の兄嫁さんがアタシのもとへやって来た…
「アリョーナさん…みんな待っていますわよ。」
「アタシ…行きたくない…結婚式…いや。」
「そんなことを言わないでよ…ヤホースキーさんの親族のみなさまは、はるばるウラジオストクからお越しになられたのよ…ヤホースキーさんもアリョーナさんと一緒におててをつなぎたいというているのよ。」
次兄の兄嫁さんの言葉を聞いたアタシは、思い切りキレてしまった…
「ヤホースキーさんのことは出さないでよ!!」
「どうしたのよ…あっ、アリョーナさん…」
次兄の兄嫁さんは、アタシの右のくびすじに男の歯形がついていたのをみてビックリしていた…
「アリョーナさん…右のくびすじについているその傷…どうしたのよ…アリョーナさん…」
アタシは、見られたくない傷を次兄の兄嫁さんに見られたので、激しい声をあげて泣いていた…
「イヤ…見ないでよ…見ないでよ!!」
アタシは、頭がサクラン状態におちいってしまった後、教会から飛び出して行った…
教会から飛び出したアタシは、いちもくさんに家に帰って、逃げる準備を始めていた…
ボストンバックに着替えと当面生きて行くための品物を詰め込んで、赤茶色のバッグには当面生きて行くためのおカネと貴重品類を入れました。
荷造りを終えたアタシは、家から逃げだした後、足早にシベリア鉄道のハバロフスク駅へ向かった…
そして、ハバロフスク駅に着いたアタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持ってモスクワ行きのシベリア鉄道の特急列車に乗り込んだ…
アタシは、本当の幸せさがしの旅に出ることを決意した…
アタシが家出の準備をしている時であった…
教会では、結婚式ができなくなっていたので大騒ぎになっていた…
ヤホースキーさんの家の出席者のみなさまは、教会の人から『他に結婚式の予定が入っているカップルさんがいるので、日を改めてください。』と言われたので、出席者のみなさまはスゴスゴと宿泊先のホテルに帰ってしまった…
アタシがいなくなった新婦の控え室には、ヤホースキーさんの両親とアタシの両親と2番目の兄と兄嫁さんがいた…
アタシが教会から逃げ出したことを聞いたヤホースキーさんのお母さまが、カンカンに怒っていた…
「アタシは、息子とアリョーナさんの結婚は大反対だったのよ!!この際だからはっきりと言わせてもらうけれど、兄嫁さんがアリョーナさんの右のくびすじに男の歯形がついていた…それは、息子以外に好きな男の人がいたと言うことなのよ!!あなたたちはアリョーナさんに好きな人がいることをどうしてアタシたちに言わなかったのかしら!!」
ヤホースキーさんのお母さまの言葉に対して、次兄の兄嫁さんは『何かの間違いです!!アリョーナさんには、ヤホースキーさん以外には好きな男の人はいないのです!!』と言うた…
けれど、ヤホースキーさんのお母さまはますますおかんむりになっていたので、アタシがヤホースキーさん以外に好きな男の人がいると決めつけて、わけの分からないことをゴタゴタと言うていた…
アタシが教会から逃げ出したので、ヤホースキーさんの家はアタシの家に対して『4000万ルーブルを返してください!!』と言われたので、4000万ルーブルを返すことになってしまった…
アタシは、お見合い結婚を反古(ホゴ)にしたので、家からカンドウされてしまった…
家からカンドウされたアタシは、自分の力で生きて行くことを余儀なくされた…
ハバロフスク中心部の女子大に通う19歳の少女です。
大学卒業後、なりたい職業は学校の先生です。
アタシの家族は、ハバロフスク市内で貿易商を営む父と母と一番上の兄(30歳)と2番目の兄(25歳)と次兄の兄嫁さん(34歳)の6人家族です。
一番上の兄は、父が経営している貿易商を手伝っていますが、お嫁さんはいません。
2番目の兄は、職場恋愛で知り合ったお嫁さんと結婚をしまして幸せイッパイであります。
時は、2011年5月9日頃でありました。
2か月前に日本で巨大津波を伴った大規模地震(東日本大震災)の影響で、父が経営している貿易商と取引をしていた東北地方の会社が壊滅的な被害を受けました。
顧客からの売掛金の回収が困難な状況におちいっていたので、苦しい生活を強いられていました。
そうした中で、わが家では頭の痛い問題を抱えていました。
一番上の兄にお嫁さんがいないので、父は毎度のように一番上の兄に問い詰めてばかりいました。
シーンは、わが家の朝の食卓にて…
テーブルの上には、ライ麦のパンとコンソメのポトフとハムエッグとグリーンサラダが置かれていました。
次兄の兄嫁さんは、マグカップにひとつずつチャイ(紅茶)を入れていた…
父は、多少あつかましい声で一番上の兄にこう言っていた…
「ヒメネンコ、お前はいつになったら嫁さんをもらうのだ!?」
「何だよオヤジィ…またその話かよぉ…」
父の言葉に対して、一番上の兄もまた多少あつかましい声で父に言い返した…
一番上の兄に言い返された父は、読みかけのロシア語の新聞をバサッとひざの上にたたきつけながら一番上の兄に言い返した…
「ヒメネンコは『そのうちに…』とばかり言ってるようだけど、もう何年間宙ぶらりんのままでいるつもりなのだ!?どうして、ヒメロフ(アリョーナの2番目の兄)のように自分から積極的に動こうとしないのだ!!」
「無理なことを言うなよ!!ヒメロフが職場恋愛でお嫁さんと知り合って結婚できたからオレも恋愛結婚しろだなんて、そんなこと無理だよ!!」
一番上の兄と父が大ゲンカを起こしていたので、紫色のTシャツにボブソンのジーンズ姿のアタシはのみかけのチャイをゴクゴクとのんだ後『ごちそうさまでした。』と言うたあと、席を立ってカバンを手にした後、大学へ向かいました。
ネイビーの背広姿の2番目の兄も『仕事に行ってくる。』と言うて、席を立ってカバンを手にした後、会社へ出勤しました。
アタシんちは、毎朝のように一番上の兄の結婚問題のことで父と1番上の兄がもめてばかりいるので、食卓の雰囲気がよどんでいました。
ところかわりまして、市内カールコルスク通りにあるアタシが通っている女子大にて…
時は、昼の2時頃のことでありました。
アタシが足早に大学の正門を出た時でありました。
この時に、市内にある医科大学の4回生のカレ・タメルランと出会いました。
「アリョーナ。」
「ハーイ、タメルラン。」
「ゼミ終わった?」
「うん、今終わったところよ。ねえ、どこに行く?」
「そうだなァ…どこに行こうかな?」
「タメルランに任せるわ。」
そしてアタシは、いつものようにタメルランと一緒に腕を組んでハバロフスク市内を歩いて、デートをしていました。
アタシとタメルランが出会ったきっかけは、1年前の2010年の夏にハバロフスク市内にある大学4校が合同で恋人のいない男女20人が集まって開かれた合コンの時でありました。
場所は、市内コムソモール通りにあるサッポロ(北海道料理のレストラン)にて…
みんなでワイワイとおしゃべりをしながら石狩鍋を食べていた時に、タメルランがアタシに声をかけて来ました。
最初は軽いおしゃべりから入って、いろんなことを話して行くうちにタメルランに気に入らました。
それからふたりは、お付き合いを始めたました。
この時に、タメルランはプーチンカ(ウォッカ・アルコール度40度)をのんでいまして、すっかり上機嫌になっていた…
カレは、3回目の『ダバーイ!!』(乾杯)を言うて、3杯目のウォッカをのんでいた…
タメルランは、3杯目のウォッカをストレートで一気にのみほして、すっかり上機嫌になっていた…
そんなタメルランは、アタシの顔を見て『アリョーナ…ぼくとお付き合いをしてほしい。』と言ってきた…
アタシは、タメルランの勢いに負けてしまった…
そこから、お付き合いが始まった…
2011年2月頃、アタシとタメルランは付き合って行くうちに、密かに結婚を意識し始めていた…
そしてふたりは、結婚に向けてアレコレと準備していたけど、その時に大きなかべにぶち当たってしまった…
タメルランは、北コーカサスのチェチェン自治共和国の生まれでありました。
カレの家は、アタシと結婚することには猛反対を唱えていた…
だけど、アタシはタメルランの家ご家族から結婚を反対されても、この愛を貫きとおして(つらぬきとおして)行こうと固く決心していた…
しかし、2011年6月頃にわが家で大事件が発生したことを機に、ふたりは引き裂かれて離ればなれになってしまった…
事件は、2011年6月11日に発生しました。
父が経営している貿易会社を手伝っていた一番上の兄が、顧客からの預り金3000万ルーブルを勝手に流用して、スッテンテンにしたあげくに、行方不明になってしまった…
一番上の兄は、嫁さんが来てくれないさみしさからサウナ(ここでは、ロシアの風俗店のことを言う)に出入りしているところをウラジオストク(またはウラジボストーク)にいる父の知り合いの人に目撃されていたことが発覚した…
一番上の兄は、15日前から様子がおかしくなっていた…
ウラジオストク市内にあるサウナ店に入り浸りになって、店の女のコに大金を貢いでいた…
父は、顧客から預かった3000万ルーブルをベンショウしなければならなかったので、キンサクに困っていた…
6月13日の夕食のことであった…
アタシは、父からいきなり『アリョーナ、お見合いの話を入れておいたから…』と言われたので、どうしてよいのか分からずにとまどっていた…
アタシのお見合い相手は、ウラジオストク市内にある海運会社の常務の御曹司(おんぞうし)のヤホースキーさんでありました。
ヤホースキーさんのお父さまは、これまで大切にしていた日本の陶器(とうき)の骨董品(こっとうひん)や株券やゴールドプレートなどを全部売却して4000万ルーブルを受け取ったあと、うちに送金して下さった…
4000万ルーブルを与える条件として、アタシが女子大を退学して、ヤホースキーさんと結婚すると言うことであった…
そんな…
あんまりだわ…
大学も、恋も順調でこれからだと言うときに…
なんで大学をやめて、好きでもない人とお見合いをして結婚しなければならないの…
アタシ、イヤ…
好きな人と結婚できないのであれば、結婚せずにキャリアひと筋を選ぶ方がいいみたい…
困り果てていたアタシは、父に対して『アタシが大学を卒業するまで結婚を待ってほしい。』と申し出た…
しかし、父は口をへの字に曲げましていやそうな顔をしてアタシにこう言うた…
「ヤホースキーさんの家については、過去にトラブルが発生した時に金銭的な援助をしてあげたのだよ…他にも、ヤホースキーさんの家に恩義があるのだよぅ…」
父は、ヤホースキーさんの家に恩返しができていないと言うだけなので、アタシのことは二の次三の次になっていた…
その一方で、アタシとタメルランが付き合っていると言うことについて、アタシの家族は全く気がついていない…
ヤホースキーさんは、これまでにお見合いを100回以上も断られてばかりいたので、気持ちがヒヘイしていた…
ヤホースキーさんが『ぼくは39歳でもうあとがないのだよぅ…』と言うてすごく焦っているから、アタシと結婚したいと言うてきた…
アタシは、ひ弱で女々しい性格のヤホースキーさんをべっ視していた…
6月18日に、アタシは家族と一緒にジェルジンスカヴァ通りにあるスニェジンカ(高級レストラン)へ行きました。
アタシたち家族は、ランチを摂りながらヤホースキーさんの家のひとたちと楽しくおしゃべりをしていた…
しかし、そんな中でヤホースキーさん本人が黙りこんでしまったあとつらそうな表情をしていた…
仲人さんの奥さまは、ヤホースキーさんにやさしい声で言いました。
「ヤホースキーさん、どうしたのかな?せっかくのお見合いなのだから、アリョーナさんとお話をしてみたらどうかな?」
「えっ?」
仲人さんの奥さまにやさしい声で言われたヤホースキーさんは、ますます困惑ぎみの声で奥さまに言うた…
「あのう…いっ、一体何からお話をすればよろしいのでしょうか?わっ、わからないのです。」
「何を話したらよいのかって…例えば、趣味の話とか…あと、ヤホースキーさんがアリョーナさんに聞きたいこととか…いっぱいあるでしょ…」
(チッ…)
ヤホースキーさんは、チッと舌打ちしたあと多少怒りぎみの口調で仲人さんの奥さまに凄んで行った…
「なっ、何なのですか一体!!ぼくはお見合いを頼んだ覚えはないのに、なんで勝手なことをしたのだ!!」
アタシは、ヤホースキーさんの言葉を聞いてムッとなっていたので、席をけとばしたあと外へ出て行った…
お見合いは、ヤホースキーさんが仲人さん夫妻に暴言をはいたことが原因でめちゃめちゃに壊れてしまった…
しかし、ヤホースキーさんの両親はアタシの家に電話をして『息子を30代のうちに結婚をさせてあげたい。』とアタシの父にコンガンしていた…
父は、ヤホースキーさんの両親の気持ちをくみ取って『ヤホースキーさんは、気持ちが迷っていたから分からなかっただけだよ…』とやさしく答えました。
その上で、双方の家が2011年7月23日に挙式披露宴を挙げましょうと言うことで、結婚式場に予約を入れてしまいました。
アタシの両親は、アタシが通っていた大学を中退する手続きを取ってしまったので、アタシは大学に行くことができなくなった…
この時、次兄の兄嫁さんも『アリョーナさんによく似合うウェディングドレスを見つけてあげるから…』と言うて張り切ってた…
ヤホースキーさんのおばさんたちもすっかりその気になっていて、ヤホースキーさんに細々と世話をやいていた…
同じ頃であったけど、タメルランもグロズヌイ(チェチェン共和国の首都)にいる父親から『母親が大病で倒れたから帰って来い!!』と言う知らせを聞いたので、大学を中退することになった…
タメルランはこの時、大学をやめてグロズヌイに帰ろうかどうしようかと迷い続けていた…
タメルランは、大学を卒業したらすぐにアタシと結婚することを決意していた…
なので、実家からの知らせを聞いたときには気持ちが動揺していた…
2011年7月22日、挙式披露宴にそなえて、ヤホースキーさんの家の親族のみなさまがウラジオストクから飛行機に乗りましてハバロフスクまでやって来ました。
ヤホースキーさんの家の親族のみなさまは、宿泊先のホテルに着いた後、個々の部屋で過ごしていた…
その日の夜のことでありました。
アタシは、タメルランとふたりでヂモーナ公園にて密会をしていた…
アタシは、白に黒のよこしまのキャミソールの上から白のブラウスをはおって、下はネイビーのデニムのスカートをはいていた…
タメルランはアタシに、グロズヌイに帰ることにしたと伝えていた…
「アリョーナ…オレ…グロズヌイに帰ることにしたよ…」
「タメルランも…大学をやめるの?」
「ああ…おふくろが…大病で倒れたのだよ…医者になろうと今日までがんばっていたのだけど…オヤジが大学をあきらめて、家に帰れ…グロズヌイで就職をしろと…うちには…おさないきょうだいがいるのだよ…オヤジが働けないから…オレが働いておカネをかせがなくてはならなくなってしまったのだよ…明日…列車に乗って帰ることにしたから…元気でな…オレのことはもう忘れて…オレよりもいい男と幸せになれよ…」
タメルランは、アタシにこう言うたあと、公園をあとにした…
タメルランと別れたアタシは、公園をあとにして、マスコーフスカヤ通りから少し道を外れた露地を通っていた…
その時にアタシは、派手なシャツを着たガラの悪い男ふたりに声をかけられてしまった…
アタシは、必死になって抵抗をしたけど、ふたりの男にはがいじめにされたあと、ひとけのないところへ連れて行かた…
「ちょっと…何をするのよ!!離して!!離して!!」
アタシは、ガラの悪い男ふたりに連れて行かれた後、行方がわからなくなってしまった…
それから三時間後…
アタシは、ふたりの男に力任せに押さえつけられて、口にさるぐつわをかまされたあと、ボロボロになるまで身体を犯されてしまった…
アタシは、カレと別れたことと親が決めたお見合い相手との結婚でギスギスしていた…
そのまた上に、見知らぬ男たちからオジョクを受けたので、心が大きく傷ついてしまった…
どうして…
どうして、こんなことになってしまったの…
悔しくて…
恥ずかしい…
アタシは、そんな気持ちを抱えたまま7月23日の挙式披露宴の日を迎えた…
挙式は、シベリア鉄道のハバロフスク駅の近くにある教会で挙行されます。
ヤホースキーさんの親族のみなさまは、チャペルにてにこやかな顔で挙式が始まるのを待っていた…
しかし、新婦の控え室にいるウェディングドレス姿のアタシは、気持ちがギスギスした状態で部屋から出ることができずにうつになっていた…
そんな時に、次兄の兄嫁さんがアタシのもとへやって来た…
「アリョーナさん…みんな待っていますわよ。」
「アタシ…行きたくない…結婚式…いや。」
「そんなことを言わないでよ…ヤホースキーさんの親族のみなさまは、はるばるウラジオストクからお越しになられたのよ…ヤホースキーさんもアリョーナさんと一緒におててをつなぎたいというているのよ。」
次兄の兄嫁さんの言葉を聞いたアタシは、思い切りキレてしまった…
「ヤホースキーさんのことは出さないでよ!!」
「どうしたのよ…あっ、アリョーナさん…」
次兄の兄嫁さんは、アタシの右のくびすじに男の歯形がついていたのをみてビックリしていた…
「アリョーナさん…右のくびすじについているその傷…どうしたのよ…アリョーナさん…」
アタシは、見られたくない傷を次兄の兄嫁さんに見られたので、激しい声をあげて泣いていた…
「イヤ…見ないでよ…見ないでよ!!」
アタシは、頭がサクラン状態におちいってしまった後、教会から飛び出して行った…
教会から飛び出したアタシは、いちもくさんに家に帰って、逃げる準備を始めていた…
ボストンバックに着替えと当面生きて行くための品物を詰め込んで、赤茶色のバッグには当面生きて行くためのおカネと貴重品類を入れました。
荷造りを終えたアタシは、家から逃げだした後、足早にシベリア鉄道のハバロフスク駅へ向かった…
そして、ハバロフスク駅に着いたアタシは、ボストンバックと赤茶色のバッグを持ってモスクワ行きのシベリア鉄道の特急列車に乗り込んだ…
アタシは、本当の幸せさがしの旅に出ることを決意した…
アタシが家出の準備をしている時であった…
教会では、結婚式ができなくなっていたので大騒ぎになっていた…
ヤホースキーさんの家の出席者のみなさまは、教会の人から『他に結婚式の予定が入っているカップルさんがいるので、日を改めてください。』と言われたので、出席者のみなさまはスゴスゴと宿泊先のホテルに帰ってしまった…
アタシがいなくなった新婦の控え室には、ヤホースキーさんの両親とアタシの両親と2番目の兄と兄嫁さんがいた…
アタシが教会から逃げ出したことを聞いたヤホースキーさんのお母さまが、カンカンに怒っていた…
「アタシは、息子とアリョーナさんの結婚は大反対だったのよ!!この際だからはっきりと言わせてもらうけれど、兄嫁さんがアリョーナさんの右のくびすじに男の歯形がついていた…それは、息子以外に好きな男の人がいたと言うことなのよ!!あなたたちはアリョーナさんに好きな人がいることをどうしてアタシたちに言わなかったのかしら!!」
ヤホースキーさんのお母さまの言葉に対して、次兄の兄嫁さんは『何かの間違いです!!アリョーナさんには、ヤホースキーさん以外には好きな男の人はいないのです!!』と言うた…
けれど、ヤホースキーさんのお母さまはますますおかんむりになっていたので、アタシがヤホースキーさん以外に好きな男の人がいると決めつけて、わけの分からないことをゴタゴタと言うていた…
アタシが教会から逃げ出したので、ヤホースキーさんの家はアタシの家に対して『4000万ルーブルを返してください!!』と言われたので、4000万ルーブルを返すことになってしまった…
アタシは、お見合い結婚を反古(ホゴ)にしたので、家からカンドウされてしまった…
家からカンドウされたアタシは、自分の力で生きて行くことを余儀なくされた…
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