【放浪恋愛】アリョーナの旅路~ソッフィオーネを鳴らすまで
第15話
メアリーさんとカレの結婚式が台無しになった事件から8日後の10月12日のことであった。

メアリーさんと婚約者のカレは、マーティーさんに結婚式を台無しにされたので、ふたりとも会社をやめてしまった…

社内では、あいつがふたりの結婚式をぶち壊したのは、あいつがメアリーさんに横恋慕をしていた…と言うウワサが流れていた…

あいつは、今もなおアタシと結婚をすること自体に強い不満を抱き続けていたので、家庭内での人間関係も極力悪化していたし、社長さんが勝手に話を進めたことにも腹を立てていた…

社長さんは、どうにかしてあいつの不満をやわらげてあげようと思って、ランチ時に、あいつに事情を聞いた上で、待遇面の改善をしようと思っていた…

社長さんとあいつは、トリンビュータワーの近くにあるカフェレストランに行って、ランチを食べながらこんな会話をしていた…

「まいったなぁ~、メアリーさんは会社をやめてしまうし、メアリーさんの婚約者のカレは会社をやめたあと、行方不明になってしまった…メアリーさんのご両親が『マーティーのクソ野郎を銃殺してやる!!』と言うて、激怒しながら猟銃を取り出すさわぎを起こしてしまったのだよ…マーティーさん、人の話を聞いているのかな~」
「るせーな、聞いているよ!!」
「マーティーさんに聞くけど、マーティーさんはそんなにアリョーナさんと結婚をすることがイヤなのかなぁ…」
「イヤに決まってるわ!!」
「アリョーナさんのどういうところに不満があるのかなァ?アリョーナさんは、働き者で申し分ないいい女の人なのだよ。」
「あんたが、あんなキズ物の女を紹介するのが悪いのだよ!!」
「マーティーさん、私は、マーティーさんが会社のためにひたすらガマンして働いて来たので、なんとかしてあげたいと思ってアリョーナさんを選んであげたのだよ…マーティーさんの収入が少ないのなら共稼ぎをすれば結婚生活に必要な費用は満たされるのだよ…アリョーナさんは働き者だから、足りない分を補うことができると思って…」
「きれいごとばかりを言うなよ虫ケラ以下!!あんたはそう言って、アリョーナとメアリーをばかりにかけたのだろ!!」
「どうしてそんなにひねくれてばかりいるのだね!?」
「悪かったな虫ケラ!!…と言うよりも、ドーラクザンマイするカネがあるのだったら、従業員さんたちの生活のことをシンケンに考えろよ!!だからテメーの脳はくさっているのだよ!!」

社長さんは、あいつの言葉に対して、困った声であいつに言うた…

「マーティーさん…マーティーさんはそんなにメアリーさんと結婚をしたかったのかな?」
「ええ、したかった…最初は憧れだったけど…日増しに想いが高まっていた…あんたがメアリーとオレを別れさせたのだから、オレはだめになったのだよ!!」
「マーティーさんが社内恋愛をしたいのを止めたことについては悪かったよぉ…マーティーさんは、クレームの受付の仕事で大切な役割を任せていたので…」
「どんなにあやまってもダメだ!!」
「それじゃあ、どうすればいいのだね?どうすれば、マーティーさんは結婚に向いて行くのかなぁ~」
「ウルセーな虫ケラ!!オレの結婚適齢期を返せ!!」
「結婚適齢期を返せと言われても…」
「お前な!!従業員さんたちが一生懸命になって働いているときに平日ゴルフや政治家と接待をするカネがあるのだったら、従業員の給料に回せよ!!」

マーティーさんは、社長さんにこう言った後、イスから立ち上がって、社長さんの顔にに食べかけのランチを投げつけていた…

その後、口笛をふきながら店から出て行った…

「マーティーさん!!ワシはランチ代を払わないぞ!!マーティーさん!!」

マーティーさんが飲食代をはらわなかったので、仕方なく2人分の飲食代を社長さんがはらいました。

その頃でありました。

アタシは、いつものように朝7時から11時までホテルのリネンのお仕事、昼はドラッグストアで、夜はスポーツバーのウエイトレスのバイトで合計56ドル20セントの日当を稼ぐために働いていた…

56ドル20セントの日当だけでは足りないので、スタジアムで売り子のバイトで日当60ドルのお給料を稼いで、おカネをせっせとためていた…

アタシの気持ちは、アメリカ合衆国本土を出国して、よその国へ移住する考えしかなかった…

アタシは、クリスマスの三連休の前にアメリカを出国すると決意して、おカネをためることにした…

10月16日のことでありました。

ボストンからアタシのことを心配して、エレンがシカゴへやって来ました。

この日アタシは、朝のバイトを終えたあと、グランドパークへ行った…

ところ変わって、公園内にあるバッキンガム噴水の広場にて…

広場には、たくさんの家族連れやカップルさんたちがいて、園内散策を楽しんでいた…

アタシとエレンは、公園のベンチに座って、こんな会話をしていた…

「あのねエレン…アタシね、アメリカ社会で生きて行くことがイヤになったので、クリスマスの三連休の前の日までにあいつの家に訴訟を起こして、損害賠償金1000万ドルを受け取ったら、その足でアメリカを出て、よその国へ逃げるから…」
「アリョーナ、それはいいとして、あんた西海岸へ行くというていたのに、なんでシカゴにいるのよ…どうして、途中でやめてしまったのよ!?」
「行きたかったけれど、途中で路銀がつきてしまったのよ…ううん、そんなことどーでもいいわよ…アタシね…アメリカで暮らして行くのをやめることにしたから…ムリ…ムリよ!!東側の生まれのアタシにアメリカ暮らしなんてムリなのよ!!」
「アリョーナ…」
「こんなことになるのだったらば、よその国へ行くべきだったと思っているのよ…もうサイアクだわ…」

アタシは、頭を抱え込んだあと、気落ちしていた…

エレンは、頭を抱え込んでしまったアタシにこう言うた…

「よその国へ行きたいって…アリョーナはどこへ行きたいと言うのよ?」
「どこへ行きたいって…女性にとって幸せな国へ行きたいのよぉ…アメリカの暮らしなんかイヤだと言っているでしょ!!」
「女性にとって幸せな国に行きたいのね。」
「そうよ。」

エレンは、ひと間隔あけてからアタシにこう言いました。

「そんなに女性にとって幸せな国に行きたいと言うのだったら、今からでもハバロフスクに帰ってみるのはどうかな?」
「エレン!!それはどう言うことなのかしら!?エレンが言う女性にとって幸せな国と言えば、ハバロフスクのことを言うわけなのかしら!?」

アタシは、エレンからハバロフスクに帰ってみたらと言う提案に対して、腹を立てて怒っていた…

エレンは、困った声でアタシに言うた…

「アリョーナ、どうしてそんなに怒っているのよぉ…ハバロフスクに帰るのがそんなにイヤなの?」
「イヤだから怒っているのよ!!それって、アタシにハバロフスクに帰れと命令しているわけなの!?」
「命令なんかはしていないわよぉ…」
「していたわよ!!」
「だから、アリョーナがつらいと思っているのだったら、生まれ育った故郷に一度だけでも帰ってみたらと言っただけなのよ…あんたの実家の家族もあんたが帰ってくる日を心待ちにしているのよ…あんたが知らない国の暮らしに疲れてはいないだろうか…きちんとごはんを食べているだろうか…」
「あのね!!ハバロフスクの実家のことは出さないでと言っているでしょ!!アタシはね!!ハバロフスクの実家には帰りたくないのよ!!それなのにどうしても帰れと言うから、アタシは怒っているのよ!!」
「アリョーナ、ごめんね…イヤな思いをさせてしまってごめんね…ねえアリョーナってば…」
「エレン…エレンは家庭が裕福だから、帰る家があるよね…」
「ある…けど…」
「あのね!!アタシはね!!家はあっても、居場所がないのよ!!心から安心できる居場所がハバロフスクにはないのよ!!アタシの右のうなじをよーくみなさいよ!!」

アタシは、エレンに右のうなじについている歯形を見せた…

アタシの右のうなじについているきずあとを見たエレンは、ビックリしてアタシにこう言うた…

「アリョーナ…あんた、誰にやられたのよ?もしかして…」
「そうよ…アタシね、タメルランと別れた日の夜…両親が決めたお見合い相手とイヤイヤ結婚式を挙げる前の日の夜に…ガラの悪い男たちに集団でレイプされたのよ…恥ずかしい姿にされて…リーダーの男に右のうなじを思い切りかまれたのよ!!それでアタシの人生は大きく狂ってしまったのよ!!」
「そうだったのね…ごめんね…アリョーナ…」
「これで分かったでしょ!!アタシは恋をして、結婚をしたいと言う気持ちは…あのレイプ事件を境にして…気持ちがなえてしまったのよ!!」
「それじゃあ、あんたはこの先どうするのよ?恋人を作らない…結婚をしない…家庭を持たない…アリョーナ…あんたはこのままで本当にいいの?」
「仕方がないでしょ…あの時のレイプ事件が原因で結婚願望がなくなってしまったのよ!!」

アタシは、今の気持ちをすべて伝えたあと、くすんくすんと泣いていた…

アタシはこの時、アメリカへ来て失敗したと言う気持ちがさらに強くなっていた…

両親が決めた結婚相手との結婚式から逃げ出した後、ボストンバックと赤茶色のバッグを持って、シベリア鉄道の長距離列車に乗ってサンクトペテルブルグまで逃げた…

それからは、バイト生活に明け暮れながら幸せ探しを続けていた…

けれど、ここへ来てアタシは何をやっているのだと思うようになっていたので、気持ちがジボウジキになっていた…

ドイツにいても、フランスにいても…

そして、ボストンやシカゴにいても、アタシの居場所はどこにもない…

それじゃあ、アタシは…

一体どこへ行きたかったのだろうか…

アタシの幸せは…

どこにあるのだろうか…
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