【放浪恋愛】アリョーナの旅路~ソッフィオーネを鳴らすまで
第2話
アタシは、女子大を退学したそのまた上に、恋人との別れと親が決めたお見合い相手の男性との結婚で気持ちがギスギスしているそのまた上に、挙式披露宴の前の日の夜にきついはずかしめを受けたのでアタシはひどく傷ついていた…

立ち直るまでには、相当な時間がかかるみたい…

7月29日の朝、アタシが乗っている長距離列車がモスクワ中央駅に到着しました。

ボストンバックと赤茶色のバッグを持っているアタシは、列車を降りた後サンクトペテルブルグに向かう特急列車に乗り換えてサンクトペテルブルグへ向かっていた…

サンクトペテルブルグに着いたアタシは、しばらくの間友人が暮らしているアパートに滞在したあと、8月5日にマヤコフスキー通りにあるアパートへ移りました。

友人からの紹介で、アタシはピロシコヴァヤ(ピロシキカフェ)とベルヴェ(ナイトクラブ・エルミタール美術館の近くにある)をかけもちでバイトをすることにしました。

月給は合わせて2500ルーブルでありました。

その中から、アパートの家賃10ルーブル50カペイカを払って、残り分は食費などを切り詰めて生活して行くことにしました。

ハバロフスクにいた時は、実家の家族がいて、何もかも守られていた…

けれど、お見合い結婚を反古にして家を飛び出したので、ここから先は自分の力で生きて行かなければならない…

アタシの1日は、朝6時に起きて身支度を整えたあと、7時に部屋を出発する…

1個15カペイカのライ麦パンを買って、朝食を摂りながら、歩いてバイト先へ向かう…

日中のバイト先であるピロシキカフェでは、朝8時半から昼の2時くらいまでバイトをして、夕方5時からラストまでの間は夜のバイト先のナイトクラブで働くと言う暮らしでありました。

合計2500ルーブルのお給料の中から、食費と家賃10ルーブル50カペイカを払うなどして、残るのは500ルーブルで生活費に充てていた…

とにかく、食べて行くだけでも手がいっぱいの暮らしなので、アタシのつらさは3倍、いえ9倍も27倍もありました。

2011年8月12日、アタシはピロシキカフェでのバイトを終えた後、夜のバイト先に行くまでの間、ペテルゴフ(宮殿公園)へ行って、夜のバイトまでのひとときを過ごしていた…

アタシは、昼のバイトと夜のバイトの間の時間は、ペテルゴフの上の庭園にあるネプチューン噴水の広場へ行って、ベンチにすわって公園の風景をぼんやりとした表情でながめていた…

噴水広場の周囲には、たくさんの家族連れやカップルさんや赤ちゃんをベビーカーに乗せて散歩をしているお母さま方たちがおとずれていた…

アタシは、幸せイッパイのカップルさんたちや家族たちをみたので、顔が曇っていた…

アタシにとって、結婚とはなんだったのだろうか…

そんなことばかりを思えば思うほど、アタシの気持ちはますますブルーになってゆくばかりだった…

あの時…

アタシの意志がもっと強かったら…

タメルランと別れることなく、幸せだったのに…

その日の夜は、バイトが休みだったので、ネフスキー大通りにあるレストランに行って、ビーフストロガノフとボルシチを注文して、夕食を摂っていた…

アタシがひとりぼっちで夕食を摂っていた時であった…

27歳のドイツ人の男性で、会社の長期間出張で来ていたヒーラーさんがアタシのところにやって来ました。

グレーの背広で白で黒の水玉模様のネクタイ姿のヒーラーさんは、むらさき色のTシャツとボブソンのジーンズ姿のアタシにとなりの席に座りたいと言いました。

「ここ、座ってもいいかな?」
「イヤ…アタシ、一人でいたいから他の席に行ってよ!!」

アタシが突き放す声でヒーラーさんに言うたので、ヒーラーさんは『おいおい、それはないよ~』の表情でアタシにこう言うた…

「そんな冷たいことを言わないでほしいな~…きみの近くで空いている席と言えばここしかないのだよ。」

ヒーラーさんはアタシにこう言うたあと、ずうずうしくアタシのとなりの席に座ってた…

このあと、ウェイトレスさんが席にやって来たので、ヒーラーさんはプーチンカ(ウォッカ)を注文した…

「プーチンカパジャールスタ。」(プーチンカをください)

それから2分後に、注文したプーチンカが到着した…

ウェイトレスさんは、プーチンカのビンとタンブラと氷の入っている入れ物を置いてからヒーラーさんに他に注文はありませんかとたずねていた…

「シトーニブチイショーハチーチェ?」(他にオーダーはございますか?)
「ニェットスパスィーバダスタータチナ。」(いいえ、もう充分です。)

ウェイトレスさんが席を外した後、ヒーラーさんは氷の入っている入れ物から氷を取り出してタンブラに入れながら、ケーソツな声でアタシに言うた…

「ねえ、君の名前は?」
「アリョーナ。」
「アリョーナちゃんだね。」
「うん、そうよ…あなたの名前は?」
「ぼくは、ヒーラー。」
「ヒーラーさんね。」

ヒーラーさんは、プーチンカのボトルのふたを空けて、氷の入っているタンブラにウォッカをそそぎながらアタシにこう言った…

「のむかい?」
「アタシはのみません…と言うか…のみたくないわ!!」

ヒーラーさんは、自分の分だけウォッカを作ってひとくちのんだあと、アタシにこう言うた…

「アリョーナ。」
「なあに?」
「生まれは、どこなのかな?」
「極東ロシア。」
「極東ロシア。」
「ハバロフスクの貿易商の娘だったけど…お見合いを反古にしてしまって、カンドウされて…今は…幸せ探しの途中かな?」
「幸せ探しの途中。」
「そうよ。」

ヒーラーさんは、ウォッカをひとくちのんでからアタシにこう言うた…

「アリョーナは、何でお見合いをしたのかな?」
「何でって…アタシの父が経営している会社を手伝っていた一番上の兄がね…顧客から預かっていた3000万ルーブルを勝手に使い込んだあげくに…サウナ(風俗店)の女のコと行方をくらませてしまったのよ…お見合い相手の家は、アタシの父の知り合いの家だったのよ…4000万ルーブルをユウヅウしてくださったお礼に…アタシに大学をやめて結婚しろと言われたのよ…好きでもない男性と結婚しろ…結局、父は家のことだけしか頭にないので、アタシのことは二の次三の次だからどーでもいいのよ…と言うよりも、結婚することは…父親の自己都合でするものなのよね…きっと…」

アタシの言葉を聞いたヒーラーさんは、ウォッカをひとくちのんでからアタシに言いました。

「家のための結婚自体がイヤなんだよね…それで、今のアリョーナの気持ちはどんな気持ちなのだ?ハバロフスクにいたとき、好きなカレはいたのか?」
「いたけれど…別れた…カレの家が、結婚に反対をしていたから…別れたわ。」
「そうだったのだ…」

ヒーラーさんは、ウォッカをのみほしてからアタシに言いました。

「アリョーナ。」
「なあに?」
「オレが…忘れさせてあげようか?」
「ヒーラーさん。」
「ぼく、この近くのホテルに泊まっているのだよ…よかったら、一緒に行かないか?」

アタシは、ヒーラーさんの言われるがままに、ネフスキー大通りにあるホテルへついて行きました。

ヒーラーさんが泊まっているホテルの小部屋にて…

「アリョーナ…」
「あっ…」

ヒーラーさんは、アタシをギュッと抱きしめたあと、激しいキスをしながらベッドへ寝かせていた…

(ドサッ…ジーッ…)

「ああ…イヤ…」

ヒーラーさんは、アタシが着ていたボブソンのジーンズを脱がして、あしもとからぬきとった後、無我夢中でアタシを抱いていた…

「あっ…ヒーラーさん…ああ…」

ヒーラーさんに抱かれていたアタシは、夢心地に包まれていた…

それから4時間後、アタシはヒーラーさんが眠っているベッドから起きあがって、ユニットバスへシャワーを浴びに行った…

アタシは、身体に付着しているヒーラーさんのにおいをシャワーで洗い流していた…

この時から、アタシはヒーラーさんのことが好きになっていた…

その一方で、グロズヌイに帰ったタメルランはどうしていたのかと言うと、実家があるグロズヌイに帰ったのかどうかが分かっていないので音信不通になっていました。

その中で、アタシはもうヒーラーさんに乗りかえていたので、タメルランのことはきれいに忘れていました。

そしてまた、次の日のことでありました。

アタシは、いつものように午後2時までピロシキカフェのチュウボウで食器洗いのバイトをしていました。

ピロシキカフェでのバイトが終わった後、アタシはいつものようにペテルゴフの上の庭園にあるネプチューンの噴水の広場にあるベンチに座って、いつものようにのんびりと過ごしていた…

そんな時に、背広姿のヒーラーさんがアタシの元にやって来た…

「アリョーナ。」
「ヒーラーさん。」
「バイトは?」
「今終わったところよ…」
「アリョーナは、いつもここへ来ているのかい?」
「ええ、そうよ…夜のバイトが始まるまでは、ここでのんびりと過ごしているの…ここは、アタシのお気に入りの場所なの。」
「そうなんだ…アリョーナは、夜もバイトをしているのかな?」
「そうよ…ナイトクラブでバイトをしているわ。」
「そうなんだ…座ってもいいかな?」
「いいわよ。」

ヒーラーさんは、アタシにひとこと言った後となりの席に座った…

その後、ふたりでこんな会話をしていた…

「ねえヒーラーさん。」
「なあにアリョーナ。」
「ヒーラーさんは、カノジョはいるのかしら?」
「いないよ…と言うよりも、ぼくの身近なところでは…身丈に合うカノジョはひとりもいないのだよ…」
「どうしてなの?」
「どうして…と言われてもさぁ…分からないよ。」

ヒーラーさんは、アタシからの問いに対してどう答えればよいのか分からずにとまどっていた…

アタシは、ヒーラーさんにこう言いました。

「ねえ…ヒーラーさん…あなたは…アタシのことが好きなの?」
「ああ…もちろん好きだよ…」
「アタシもね…ヒーラーさんのことが…好きになったの…」

アタシの言葉を聞いたヒーラーさんは、アタシにこう言いました。

「ぼくも…アリョーナのことが好きになったよ…なあ…ぼくと…恋を始めてみないか?」
「恋を始めてみないか?」
「空いている時間でいいのだよ…ぼくは、9月まではサンクトペテルブルグに滞在しているから…どうかな?」

ヒーラーさんは、9月中までは仕事上の関係でサンクトペテルブルグに滞在しているのを聞いたので、アタシはヒーラーさんとお付き合いを始めることにしました。

それから1ヶ月の間、アタシはカレと一緒に休みごとに会って、サンクトペテルブルグ市内でデートを楽しんでいました。

ふたりは、チャイナヤ・ローシュカ(ロシアクレープのファストフード店)へクレープを食べに行ったり、コリインスキー劇場へ行って、クラシックやオペラの鑑賞など…たくさんデートを楽しんでいました。

特に行くところがない時は、エカテリーナ公園で散策をするなどして、ふたりの時間を楽しんでいました。

2011年9月24日のことでありました。

ヒーラーさんのサンクトペテルブルグ滞在の期間が残り少なくなってきたこの日に、ヒーラーさんがアタシのスマホに電話をしてきました。

ヒーラーさんから『話があるから、セーヴェル(ロシア菓子の店)まで来てほしい。』と言われたアタシは、ヒーラーさんが待っているセーヴェルにあるガーデニングカフェへ行きました。

ところ変わりまして、セーヴェル(ロシア菓子の店)にて…

アタシとヒーラーさんは、ガーデニングの席に座って、店の名物のカルトーシュカと香りのいいお茶を注文しました。

ふたりは、お茶をのみながらこんな会話をしていました。

「アリョーナ。」
「なあに?」
「アリョーナに、大切なお話があるのだよ。」
「大切なお話があるって?」
「うん。」

ヒーラーさんは、お茶をひとのみしてからアタシにこう言いました。

「アリョーナ、オレ…9月いっぱいで会社を退職して…実家があるフライグブルグに帰ることに決めたよ。」
「フライグブルグって…ドイツへ帰るの?」
「うん。」
「なんで会社をやめるのよ?せっかく就職できた会社なのにもったいないじゃないのよ。」
「なんで会社をやめるのかと言うと、実家のバーデンワインのおろし問屋さんを手伝おうと思っているのだよ。」
「実家のワインのおろし問屋を…手伝いたいのね。」
「もちろんだよ…そこでアリョーナにお願いがあるのだよ…いいかな?」
「アタシにお願い?」
「ああ…オレと一緒に…ドイツで…暮らさないか?」

ヒーラーさんは、アタシにプロポーズを切り出しました。

アタシはこの時、うれしくなって、涙がポロポロとこぼれていた…

アタシは、震える声でヒーラーさんに言いました。

「ヒーラーさん…こんなアタシでも…いいの?」
「もちろんだよ…オレは…アリョーナのことが好きなのだよ…大好きだから…オレのそばにいてほしい…」

ヒーラーさんからのプロポーズを聞いたアタシは、ヒーラーさんと一緒にドイツに行って、結婚しようと決意した…

今度こそ、アタシは幸せになるのよ…

アタシは心の中で何度も言い聞かせていた…

そして2011年10月1日のことであった…

アタシは、サンクトペテルブルグでのバイト生活をやめて、ヒーラーさんと一緒に生まれ育ったドイツへ行って、結婚をすることにしました。

ヒーラーさんが生まれたフライグブルグは、森林と清流に囲まれた学園都市で、フランスとの国境に近い街であります。

サンクトペテルブルグから国際列車に乗ってヘルシンキまで行って、ヘルシンキからフェリーに乗って、エストニアへ渡って、そこから飛行機でドイツに入国をしました。

その後、ベルリンから列車を乗り継いでフライグブルグへ向かいました。

アタシとヒーラーさんがフライグブルグに到着したのは、10月5日頃でありました。

ヒーラーさんの実家は、市内のメインストリートのアイゼンバーン大通りにあるバーデンワインのおろし問屋さんで、実家の家族は両親と兄夫婦と兄夫婦の子供二人のあわせて6人家族です。

ヒーラーさんとアタシは、フライグブルグの駅に到着後、ヒーラーさんの実家へ行きました。

森林と清流に囲まれたフライグブルグへやって来たアタシは、今度こそは幸せになるのだと意気込んでいました。

アタシは、ヒーラーさんと一緒にヒーラーさんの実家へやって来た…

「ただいま。」
「おお、ヒーラー、帰ってきたのか。」

ヒーラーさんの兄夫婦が、アタシたちを温かく出迎えて下さった…

「おふくろとおやじは?」
「奥の座敷にいるよ。」

アタシは、ヒーラーさんに連れられて実家の奥の座敷にいる両親のもとへ行った…

ヒーラーさんは、両親に実家に帰ってきたことを伝えたあと、アタシを紹介しました。

「おふくろ、おやじ…紹介するよ…アリョーナさんです。」
「おかあさま、おとうさま…初めまして、アリョーナです。」

アタシは、ヒーラーさんのご両親にていねいな言葉で初対面のごあいさつをしました。

けれど、ヒーラーさんのご両親はアタシを見るなり気難しい表情をしていた…

ヒーラーさんは、そんなことはおかまいなしに両親にアタシと結婚することを伝えていた…

「おふくろ、おやじ…オレ…アリョーナと結婚をすることにしたよ…」

ヒーラーさんが両親にアタシと結婚することを伝えた…

けれど、ヒーラーさんのご両親の表情がますます固くなっていた…

そして、その日の夕方のことでありました。

アタシとヒーラーさんは、コロンビ公園へ行きました。

ふたりは、ベンチに座ってお話をしていた…

アタシは、ヒーラーさんのご両親が固い表情になっていたのをみて『アタシはよそもんだから歓迎されていないみたい…』と思っていたので、つらそうな声でヒーラーさんに言うた…

「アタシ…ヒーラーさんのご両親からあんまり歓迎されていないみたいだわ…ヒーラーさんのご両親は、アタシを見るなり気難しい表情をしていたから…アタシのことがキライなのよ…」
「アリョーナは、どうしてそのように思うのかな?」
「どうしてって…ヒーラーさんのご両親はアタシのことは気に入らないと言う表情していたわよ…たぶん『(旧)東側の女はいりません!!』と言うことなのよ…」
「そんなことはないよ…おふくろとおやじは初対面だったから、アリョーナを見てどうやってあいさつをすればよいのか分からなかっただけだよ。」
「ほんとうかしらねぇ…」
「ほんとうだよ…おふくろとおやじは気難しい顔をしているけれど、本当はいい人なんだよ…戦時中(第二次世界大戦後)の痛手を受けたあと、ワイナリーを復興させるために必死になって働いてきた…仕事ひとすじで通して、夫婦でワインのおろし問屋さんを大きくさせて行くことで精一杯になって生きてきたから苦労人なんだよ。」
「それはわかっているわよ…けれど、あなたがアタシをご両親に紹介した時に、ご両親が気難しいでアタシのことをイカクしていたから…アタシはきらわれているのよ。」
「そんなことはないよ…両親はとまどっていただけなのだよ。」
「そのようなに言えるコンキョは、あるのかしら?」
「あるよ…兄貴の結婚の時だってそうだった…」
「お兄さまの結婚の時?」
「そうだよ…兄貴の嫁さんはベルギーの生まれなのだよ…兄貴の嫁さんも、少しずつ少しずつおふくろとおやじに気に入られて行ったのだよ…大丈夫だよ…最初のうちはいろいろあるけど、時が来ればおふくろとオヤジの気持ちも変わるよ…おふくろとおやじに気に入ってもらえるよ。」

ヒーラーさんはアタシに、兄嫁さんの時の話をして『大丈夫だよ』と言うた…

けれど、アタシはますますふてくされた表情でヒーラーさんに『めんどくさい』と言うた…

「アタシ、イヤ…サンクトペテルブルグへ帰りたい…」
「アリョーナ。」
「アタシね…やっぱりあんたと結婚することをやめるから…よく考えてみたら、あんたの実家で暮らして行くのは無理みたい…兄嫁さんもできたからアタシもできるなんて…軽々しく言わないでよ!!」
「アリョーナ。」
「アタシね…今からサンクトペテルブルグへ帰りたいから、飛行機か列車のチケット手配してよ。」
「えっ?」
「えっ?じゃないでしょ…早くチケット手配してよ!!」
「えっ?サンクトペテルブルクへ帰りたいからチケット取れって?」
「(ますますイラついた声で)ヒーラーさん!!アタシ、サンクトペテルブルクへ帰りたいというているのよ!!。チケット手配してと言うているのが聞こえていないわね!!」
「(泣きそうな声で)そんな…それじゃあ、結婚どうするのだよぅ…」
「アタシは(旧)東側の出身だから西側の人と結婚することができないのよ!!あなたのご両親は(旧)東側の女性は嫁としてふさわしくないという顔をしていたわ!!それにね、お嫁さんがほしいと言うのであればのこの街で探せばいいでしょ!!」
「えーっ、どうしてなのだよぅ?」
「この街は学園都市だから、若い女の子たちがたくさんいるでしょ…あなたは男前だからじっとしていても身丈にあう恋人さんはみつかるでしょ…」
「アリョーナ、どうしたのだよぉ?オレのことイヤなのかよぅ…」
「その通りよ!!アタシはあなたのご両親が気に入らないから…ヒーラーさんと結婚しない!!そんなことよりも早くサンクトペテルブルグへ帰りたいからチケット手配してよ!!」

アタシの言葉を聞いたヒーラーさんは『待ってくれぇ…』と言うてから、アタシにこう言うた…

「待ってくれよアリョーナ。」
「何なのよ!?」
「本当にサンクトペテルブルグへ帰ってしまうのかよ?」
「そんなこと当たり前でしょ!!アタシやっぱり、女ひとりで生きて行くことを選ぶから!!」
「待ってくれよぉ…分かった…実家を出る…オ実家を出てふたりで暮らそう…それでどうかな?」
「実家を出るって…それじゃあ、仕事はどうするのよ?」

ヒーラーさんは、仕事をやめていたことをコロッと忘れていたので、しどろもどろの表情になっていた…

「探すよ…シューカツするよ…仕事が見つかったら、オレのお給料でアリョーナを食べさせる…」
「(冷めた目つきで)ほんとうかしらねぇ…」
「ほんとうだよ…オレだって、その気になれば働ける職種なんていくらでもあるよ…オレのことを必要としてくださる事業所は山のようにあるよ…新しい仕事を見つけるから…アリョーナにつらい想いをさせないから…オレを信じろよ。」

ヒーラーさんは、アタシにこう言うたあと、改めて結婚の申し込みをした…

アタシはこの時、ヒーラーさんはきっと再就職をして、地道に働いてお給料をかせいでくれると信じていたので、10月8日に聖マルティン教会で挙式を挙げて、ふたりで教会のウェディングベルを鳴らしました。
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