あたしを知らないキミへ
「じゃー行こっか!恵美加」
そう言って斗真が、あたしに右手を差し出した。

あたしは、その手を迷うことなく握り返した。
そしてあたし達は、お店を目指して歩き出した。

「あー俺もKOUKIみたいにもっとかっこよくなりてーなぁー」
「斗真はそのままがいいよ。そっちの方が斗真らしいし、あたし好きだから」
「え?今なんて言った?もう一回言って?」

斗真は嬉しそうに、あたしにそう聞き返した。
絶対に斗真聞こえてるし・・。
「やだ。絶対言わない」
「えーー。今俺、めっちゃ惜しいことしたなー」
そう言って斗真は、あからさまに肩を落とした。

「だから・・そのままの斗真が好きだって言ってるの」
2回も言うと、さすがに恥ずかしい。

あたしがそう言った途端、斗真は嬉しそうにあたしの頭をくしゃっと撫でた。


「最高の褒め言葉もらったわ」

そして斗真は、満面の笑みを浮かべた。
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