烏が鳴く頃、その呪いは現れる。
その真っ黒な瞳
ピピピッ
「ん……」
カチッという音がして、時計のアラームが鳴り止んだ。
「おはよう…」
私以外、誰もいない部屋でそう呟いた。
今日はなんだか、嫌な予感がする…。
ゆっくりと起き上がり、ぐーんっと伸びをした。
私、福井亜子(フクイ アコ)は…中学3年生の14歳。
家族は父と母、7歳年上の兄だけだ。
美男美女として有名な父と母の間で生まれた私も、その顔を受け継いだんだと思う。
でも、自覚はない。
小学校に入る前、自分に自信がない子だと診断された。
そのせいで、被害妄想も酷いし学校でも陰口を言われてばかり。
優しいお母さんとお父さんは、いつも暗い私をいつも心配してくれている。
でも、暗いのはわざと。
そうでもしておかないと、誰かがまた私の悪口を言うから。
制服を着て一階に降りると、朝ごはんを用意してくれていたお母さんが私に微笑んだ。
「おはよう、亜子。朝ごはん食べてね~」
ひとつに束ねた髪の毛は、ストレートでとても綺麗だ。
年齢よりいつも下に見られる母親は、娘の私でも美人と思ってしまう。
憧れるな、お母さんみたいな人。
「…?どうしたの、亜子?」
「ううん、なんでもない。いただきます」
お母さんは再び微笑んで、「よく食べてね」と付け加えた。
お父さんは確か…お兄ちゃんの家に泊まっているはず。
明日帰ってくるんだっけ、嬉しいな。
ぱくっとトマトを口に入れた途端、とてつもなくしょっぱい味覚を覚えて、目を見開いた。
「っーーー!!」
「ど、どうしたの!?」
慌てて飲み込み、コップに入っているお茶を急いで飲み干した。
お母さんが私に駆け寄ってくる。
「しょ、しょっぱすぎる……」
「え…?しょっぱいって……、あっ!!ごめん!お塩を入れすぎちゃったわ!」
お母さんはテーブル台に置いてあった残り少ないお塩の瓶を手に取ってそう言った。