死生

「ハァハァ。」
どれだけ歩いただろうか。
唯一持って来ていたスマホに表示された時刻は、午後十一時。
辺りを見渡すと、どこを見ても同じ景色。
森、森、森。
僕は失望感と疲れで、その場にしゃがみ込んだ。
スマホで場所を調べようとしても、ここは圏外。
ただの森では無いようだ。
希望の光も月の光も見えない場所にぽつんと座る僕。
死のうかな。
僕は手で首を締めてみた。
息が出来ないように全力で締めた途端、どこからか聞こえないはずの声が聞こえた。
「やめろ!!!そんなことをしたら、どうなるか分かってるよな!?」
僕の大嫌いな声が脳に響き渡る。
その瞬間、脈打つような強い痛みが頭に走った。
首を絞めた手が恐怖と痛みでするすると緩まっていく。
上手く息が吸えない。
意識が朦朧とした中、遠くに見えたのは、栞だった。
沢山の友達に囲まれた琹。
羨ましいなぁ。
でも、栞の姿は白く薄くなって、離れていく。
優しく笑って、何処かへと消えていく。
その瞬間、僕はこんなことが前にもあったような気がした。
「琹...、何で私を置いていったの...?」
僕は呟き、倒れた。
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