今夜23時、ベリーズカフェで。
“ご乗車ありがとうございます。
次は~カミザカ~カミザカ~”
・・・・28、29、30!
「あの・・スッ・・スッ・・。」
少し俯きながら振り返る。
ヒョロガリは急に私が振り返った事で“え・・?”と小さな声で漏らした。
「やめて・・ください・・。
触らないでください・・。」
「え・・な、なに・・?」
「・・スッ・・スッ・・私のお尻・・
触らないくだざい・・グスン・・。」
さぁタクヤ~!助けに来て~!
「おい!!!!!」
・・・・!?!!?
「え・・え・・え・・。」
「お前この子に痴漢したのか!?
おい!!!」
・・・・アンタ誰・・?
ヒョロガリの腕を押さえつけたのは・・
知らないおっさん・・。
「痴漢!?おいマジか!」
「次の駅で降りろやてめぇ!!」
「おう大丈夫か!?」
おっさんの怒声に・・
周りの人達が一斉に加勢に・・
「ち・・違・・・・・
ぼ・・僕・・な、なにも・・。」
「あぁ!?てめぇ挙動不審だな!?
それが証拠だ!!」
おっさんが寄ってたかってヒョロガリを吊るし上げて・・
その圧に耐えられないヒョロガリが倒れ込む。
「取り押さえろ!!」
「「「おぉ!!」」」
ヒョロガリを上から抑えつけようと群がった人達の間から、ようやくタクヤと目が合った。
“やばくね?”
口パクでそう訴えてきたので小さく頷く。
「ち・・違う・・僕・・・・
さ・・触って無・・・・・。」
計画ではそっとタクヤが近づいて、ヒョロガリを捕まえて駅へ降りるはずだった。
でも・・この車両中の視線がウチに・・
取り押さえられるヒョロガリに・・
「「「おい・・?なんだよ?」」」
「・・アァ・・アァ・・・・!!」
!?
腕、お腹、足。
身動き取れずに押さえ込まれるヒョロガリが、急に苦しみだした。
一体どうしたの・・?
“間もなく~カミザカ~カミザカ~
お出口は左側です。”
「ミオ!」
「リュウ・・!」
「逃げるぞ!!」
「え・・うん・・!」
混乱に乗じて、リュウが隣の車両からウチの所まで駆けつけてくれていた。
私達にしか聞こえない小声で会話を交わした後、タクヤにもアイコンタクトを送る。
“プシュー”
扉が開いた瞬間・・逃げるように飛び降りて改札を抜けた。