今夜23時、ベリーズカフェで。


お店を辞めて、
マリアという名前は捨てたのに、

大川さんはそれからも毎日のように見舞いに来た。


泣きたいのはこっちなのに・・

病院食を食べようとしない私に向かって、涙目で“食べてくれ”と懇願してきて・・。


退院した後も、
しつこいぐらい家に押しかけてきた。


泣きたいのはこっちなのに・・

スーツがびしょ濡れになりながら、
涙目で私をお風呂まで運んで、

無理矢理体を洗ってきて・・


「ねぇ大川さん・・・今だけまたマリアになってあげましょうか・・?」


「馬鹿な事言わないでよ。
ほら下は自分で洗って。」




とりあえず・・この人を安心させて、

追い払った後に、
ひと思いに手首を切ろう。




「ねぇ大川さん、
久し振りにお酒が飲みたい。」


棒読みの台詞を聞くと、
途端にその表情は明るくなって、

“私用使用上等だ!”

とオーナーに欠勤連絡を入れた大川さんがハンドルを握るミニバンへ、久し振りに乗り込んだ。


















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