あなたの願い、叶えましょう。 ー ただしその代償は・・・ ー
「要件は、何かしら?」
美しいその女性に見とれてしまっていたあたしは、ハッと我に返る。
「あ、あの!ね……願いを叶えてくれるって聞いたんですけど……」
あたしがそう言うと、美しい女性はコツン、コツンとヒールの音を響かせてこちらに近づいてきた。
何もない薄暗いお店。
ただ、その美しい女性が居る、それだけのお店だった。
「どんなお願い?」
スッと左耳に髪をかける女性。
あたしはその女性のひとつひとつの行動に見とれてしまっていた。
「あの……えっと……」
「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。」
なかなか言葉が喉に詰まって出てこないあたしに、女性はそう言ってにこりと笑いかける。
「え……」
「私はこのお店のオーナー、銀といいます。よろしく」
笑みを見せたまま、女性はそう名乗った。
「あっ……あたしは……雨宮夏美といいます……!よ、よろしくお願いします……」
あたしは緊張から、パッと視線を下におろしてしまった。
「この辺り、薄暗くて気味が悪かったでしょう。よく辿り着いたわね。よほど……叶えたい願いがあるのかしら」
あたしはその言葉で、また視線を女性の方に向ける。
「そ、そうなんです!ほ、本当に……叶うんですか?噂では、お金も必要ないって……」
「ええ。噂通り、お金は必要ないわ。その代わりとして、代償はいただく。願いに見合った代償をね。」
『自分の身に関するものを取られるらしいよ』
女性……銀さんの話を聞いて、クラスの女子たちが話していたトークを思い出した。
……自分の持ってる……何か……
び、ビビってる場合じゃない!
あたしは幸せになりたくてここに来たんだ!
咲也と付き合うためならなんでも差し出すって、心に誓ったんだから!