あなたの願い、叶えましょう。 ー ただしその代償は・・・ ー



「要件は、何かしら?」




美しいその女性に見とれてしまっていたあたしは、ハッと我に返る。




「あ、あの!ね……願いを叶えてくれるって聞いたんですけど……」




あたしがそう言うと、美しい女性はコツン、コツンとヒールの音を響かせてこちらに近づいてきた。


何もない薄暗いお店。


ただ、その美しい女性が居る、それだけのお店だった。




「どんなお願い?」




スッと左耳に髪をかける女性。


あたしはその女性のひとつひとつの行動に見とれてしまっていた。




「あの……えっと……」


「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。」




なかなか言葉が喉に詰まって出てこないあたしに、女性はそう言ってにこりと笑いかける。




「え……」


「私はこのお店のオーナー、(しろがね)といいます。よろしく」




笑みを見せたまま、女性はそう名乗った。




「あっ……あたしは……雨宮夏美(あまみやなつみ)といいます……!よ、よろしくお願いします……」




あたしは緊張から、パッと視線を下におろしてしまった。




「この辺り、薄暗くて気味が悪かったでしょう。よく辿り着いたわね。よほど……叶えたい願いがあるのかしら」





あたしはその言葉で、また視線を女性の方に向ける。




「そ、そうなんです!ほ、本当に……叶うんですか?噂では、お金も必要ないって……」


「ええ。噂通り、お金は必要ないわ。その代わりとして、代償はいただく。願いに見合った代償をね。」




『自分の身に関するものを取られるらしいよ』




女性……銀さんの話を聞いて、クラスの女子たちが話していたトークを思い出した。




……自分の持ってる……何か……


び、ビビってる場合じゃない!


あたしは幸せになりたくてここに来たんだ!


咲也と付き合うためならなんでも差し出すって、心に誓ったんだから!


< 9 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop