幼な妻だって一生懸命なんです!
「弟の瀬戸啓介です」
「長瀬と申します。失礼な態度をとって申し訳ない」
「いえ、美波…姉の男運がなく、つい神経質になってしまいました」
「ははは、それは心配だ。啓介くんと呼んでも?」
「はい、もちろん」
「今はなにを?」
「大学に行ってます。二年です」
「そうか、就活など力になれることならいつでも相談に乗る」
そういうと長瀬さんは財布から名刺を出し、啓介に渡した。
「ありがとうございます」
名刺を受け取ると啓介が私に視線を合わせた。
そのあと、長瀬さんを見て
「姉と結婚するんですか?」
なんてことを聞いてるの!
「啓介!」
まだその話はなにも進んでいないのに。
「僕はそう考えています」
長瀬さんは何のためらいもなく啓介に答えていた。
啓介は無言のまま私を見る。
数秒だったと思うが、すごく長い時間に思われた。
啓介が肩から足元に下ろしていたリュックを背負い
「じゃ、俺行くわ、長瀬さん、姉をよろしくお願いします」
深々と長瀬さんに頭を下げていた。
「もちろん」
長瀬さんが返事をすると安心したように改札へと消えて行った。
啓介の背中が完全に見えなくなると、それまで黙ったいた長瀬さんが「ふー」と大きな深呼吸をする。
「焦った」
「何がですか?」
「美波がナンパされてるのかと思った」
「まさかっ」
私はこの21年間一度もナンパというものにあった事がない。
買いかぶりすぎだと笑っていたら、長瀬さんが私をじっと見ていた。
「よかった、弟で」
「昔から私のやることなすことすぐ口を出すんですよ」
長瀬さんは笑って
「わからないでもないな」
「なにがですか」
「美波は庇護欲を掻き立てられる。それだけ放っておけないないんじゃないか、可愛くて」
「…」
「黙るなよ」
「弟ですよ」
「年子だろ、大差ないじゃないか」
「そうですけど…あ、長瀬さんご兄弟は?」
「ん、いないけど」
「一人っ子?なんか、そんな感じがします」
「まぁ、兄貴のような存在はいるにはいるけど…」
「けど?」
そのまま話が続かない。
なんとなく話したくないように感じたので、この話を掘り下げることはしなかった。
駅の構内はひっきりなしに人が行き交う。
改札前にずっといては邪魔だ。
「行くか」
長瀬さんがゆっくりと歩き出した。
「長瀬と申します。失礼な態度をとって申し訳ない」
「いえ、美波…姉の男運がなく、つい神経質になってしまいました」
「ははは、それは心配だ。啓介くんと呼んでも?」
「はい、もちろん」
「今はなにを?」
「大学に行ってます。二年です」
「そうか、就活など力になれることならいつでも相談に乗る」
そういうと長瀬さんは財布から名刺を出し、啓介に渡した。
「ありがとうございます」
名刺を受け取ると啓介が私に視線を合わせた。
そのあと、長瀬さんを見て
「姉と結婚するんですか?」
なんてことを聞いてるの!
「啓介!」
まだその話はなにも進んでいないのに。
「僕はそう考えています」
長瀬さんは何のためらいもなく啓介に答えていた。
啓介は無言のまま私を見る。
数秒だったと思うが、すごく長い時間に思われた。
啓介が肩から足元に下ろしていたリュックを背負い
「じゃ、俺行くわ、長瀬さん、姉をよろしくお願いします」
深々と長瀬さんに頭を下げていた。
「もちろん」
長瀬さんが返事をすると安心したように改札へと消えて行った。
啓介の背中が完全に見えなくなると、それまで黙ったいた長瀬さんが「ふー」と大きな深呼吸をする。
「焦った」
「何がですか?」
「美波がナンパされてるのかと思った」
「まさかっ」
私はこの21年間一度もナンパというものにあった事がない。
買いかぶりすぎだと笑っていたら、長瀬さんが私をじっと見ていた。
「よかった、弟で」
「昔から私のやることなすことすぐ口を出すんですよ」
長瀬さんは笑って
「わからないでもないな」
「なにがですか」
「美波は庇護欲を掻き立てられる。それだけ放っておけないないんじゃないか、可愛くて」
「…」
「黙るなよ」
「弟ですよ」
「年子だろ、大差ないじゃないか」
「そうですけど…あ、長瀬さんご兄弟は?」
「ん、いないけど」
「一人っ子?なんか、そんな感じがします」
「まぁ、兄貴のような存在はいるにはいるけど…」
「けど?」
そのまま話が続かない。
なんとなく話したくないように感じたので、この話を掘り下げることはしなかった。
駅の構内はひっきりなしに人が行き交う。
改札前にずっといては邪魔だ。
「行くか」
長瀬さんがゆっくりと歩き出した。