幼な妻だって一生懸命なんです!
「んー、なんとなくなんですけど、長瀬さんが好きで車高上げたり、エンジン音を変えたり、荷室を少し改造していたり愛着を持って大事に何年も使っているのなら、私もこの車を好きになれると思っただけです」
長瀬さんの動きが止まって、私をじっと見ている。
また見当違いなことを言ってしまったのかと心配になっていると
「荷室まで見たのか?」
「さっきチラッと」
「チビなのに見えたのか?」
「失礼な、今日はちょっと高いヒールを履いているから荷室くらい…、」
そこまで言うと長瀬さんが「えっ?」とわざとらしく聞き返した。
「…見えてませんよ、見えませんでした。助手席に座ってから振り返ったら見えたんです」
「やっぱりな」
こんな会話でまた二人とも笑う。
どうしたんだろう、今日は長瀬さんもよく笑い、そのタイミングで私も笑顔になる。
長瀬さんといると、何を話していても楽しいのだ。
車内という狭い空間で緊張すると思っていたのに、長瀬さんといる時間は心地よい。
話さなくても、そこにある空気感は穏やかで華やいでいる。
非常に困った。
このデートでプロポーズも交際も断る理由を探すつもりでいたのに、私は長瀬さんのことが気になってしまっている。
正直にいうと、社内で目立つ存在の彼を、本当は私だって憧れていた。
ただ手の届かない人だと最初から恋愛対象として見ていなかっただけだ。
私の存在なんて知りもしないと思っていたのに、こんな風に接してくれることで私は有頂天になっていたのだ。
彼が私にプロポーズした本当の理由を知りもしないで。