幼な妻だって一生懸命なんです!
この後、炊合せや揚げ物、紅鮭といくらの炊き込みご飯などが続き、デザートの白玉ぜんざいが私の前に二つ置いてあった。
「甘いのは苦手だから、美波が食べろ」
長瀬さんの前にはブラックコーヒーだけ。
「お腹いっぱいですよ」
一応、遠慮してみるが、本当は別腹に入る。
「包んでもらうか?」
「えっ?これを?」
白玉ぜんざいだ。
これを包む、そんな人いるのだろうか?
包んでくれたとしても、きっとお土産用に別のものを作ってくれるだろう。
「食べます。大丈夫です」
今、目の前にあるぜんざいが処分される前に食べなくっちゃ。
「もったいないですよ」
「もったいない?」
「いえ、こっちの話です」
ふーんと私の行動を面白そうに見ながら返事をする長瀬さんは、食事が終わりかける頃からなんとなく落ち着かない。
あぐらをかいている足を組み直したり、スマホの画面をつけたり消したり。
だからと言って、居心地が悪い様子もない。
どうしたんだろうと思いながらも、白玉を一つ口に放り込んで柔らかさとぜんざいの程よい甘さに、食事を十分楽しんで満腹なのに、幸せでさらにお腹が膨らむ。
「美波は食べている時、本当に幸せそうな顔になる」
長瀬さんはじっと私の顔をみつめていた。
愛おしそうに細める目は私の気分を舞い上がらせる。
これが初めてじゃない。
長瀬さんは時折、私を愛おしそうにみつめるのだ。
こうした事が度重なると、長瀬さんは本当に私を愛しているのかもしれないと思う。
何度も思い過ごしだ、自惚れるなと心に鎧をまとっても、それを簡単に脱がしてしまうのだ。
そのうち、彼に笑ってほしい、彼から笑いかけてほしいと欲張りになり、彼の笑顔を見ると幸せな気持ちが膨らんでいくようになった。
もう認めるしかない。
私は彼を、長瀬さんを好きになっていた。
長瀬さんへの思いを自覚した時から、ちゃんとした返事を伝えたいと思っていた。
きちんと恋人にしてほしいと。
始まりは突然のプロポーズだった。
最初は驚いて現実味がなかったけれど、今はそれに応えたいと思うようになった。
デザートも食べ終わり、お茶と冷たいおしぼりが運ばれて来た。
甘かった口の中に渋いお茶が広がる。
向かいから、コトンと湯呑みが置かれる音がした。