幼な妻だって一生懸命なんです!


はじめこそ、どこに唇が移動しているか意識できていたものの、今はそれがおぼろげになる。
そんな中、暖かい唇が体から離された。
それがすごく寂しく感じ、つむっていた目を開いくと、要さんがさっきよりも更に熱のこもった瞳で私を見下ろしていた。

「美波、結婚してくれてありがとう」

思いがけない言葉。
そんなことを今言うなんて…
要さんの顔がぼやけ始めた。
泣き顔を見られたくなくて、両手で顔を覆い隠す。


「美波?おい?」


要さんの前で泣くことなんて無かった。
彼はいつでも私のことを第一優先に考えてくれて、私が悲しむようなことはなかったから。
ただひとつ、不安だったことは、今こうして彼に求められていることで心が満たされる。

「美波、どうした?」

顔を隠していた手を剥がされた。
困ると寄せる彼の眉間にシワが寄り、言葉が探しているのか私をじっと見ていた。
最初はこんな顔を見ると怒っているのかと思った。
彼のそばにいるとわかる。
彼は困ると眉間にシワが寄るのだ。
困らせたいわけではない。
ただ、幸せすぎて泣きそうなのだ。

「美波」

何度も私の名を呼ぶその声も、触れる唇も、私の全てを捕らえて離さない瞳も

「好き」

思いが溢れて言葉となってこぼれ落ちる。

「好きなの、要さん」

その言葉に彼が大きく息を吸うと胸が揺れ、瞳が潤む。

「やっと俺のものにできる」

彼も泣きそうな顔をしている。
涙が流れているわけでもないのに、そう見えたのは錯覚だろうか?

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