幼な妻だって一生懸命なんです!
結婚したばかりなのに家出します
十二月から年始にかけて百貨店はとにかく忙しい。
結婚式を終えた翌々日には私たちは出勤していた。
お歳暮の季節になり、Sweet Time Teaも目が回るほどの忙しさだ。
式が終わり初出勤。
周りの視線が痛いのは、相変わらずだった。
結婚したらしたで、挨拶程度しかしなかった人たちが、妙に馴れ馴れしくされている気がする。
態度がそんな風に変わるものなのかなと思いながら、店に行くとまったく態度が変わらず、逆にホッとする菜々子さんがいた。
「菜々子さん、おはようございます。結婚式に参列ありがとうございました」
日曜に式を行ったため、全員が参列できず店代表で菜々子さんに参列してもらった。
初出勤だからと少し早めに来たのに、菜々子さんがほとんどの開店準備を終えている。
スマホを見ていた菜々子さんが一度顔を上げて「おはよう」というと、またスマホに視線を落とす。
「キレイだったね、美波ちゃん」
撮影した写真をスライドさせて、私に見せて来たのはケーキ入刀した後に司会者に囃し立てられながら長瀬さんの頬にキスをした姿。
「やだ、何してるんですか!」
スマホを取り上げようとしても、菜々子さんの背は私よりも十センチ近く高く、さらに手を上へとあげられてしまった。
「いいじゃん、きれいなんだから。それに虫除け」
「虫除け?」
店先でふざけている私たちに他の店舗の女子従業員たちが寄ってきている。
「もしかして結婚式の写真ですか?」
「わ、見てもいいですか?」
「私も!」
あっという間に囲まれてしまった。
菜々子さんは「フン」と鼻息を飛ばしながらのドヤ顔で、数枚を彼女たちに見せていた。
「長瀬さん、かっこいい」
「紋付袴を着たんですか?」
「タキシードも似合ってる」
写真を見ている彼女たちは、菜々子さんのスマホを見える角度に向けたり、凝視したりと忙しい。
どうやら、私より要さんの花婿姿を見たかったようだ。