幼な妻だって一生懸命なんです!
数日後、再び、お店に由香さんが来店した。
今日はおひとりで…
ティールームで先日と同じアールグレイを注文された。
偶然にも今回も私と店長しかいない時間。
「おまたせしました」
ポットとカップを置いて、茶葉が開く飲み頃の時間を計る砂時計を逆さにする。
「ありがとう」
ニコっと笑った顔は少女のあどけさをまだ残しているかのように可愛く見える。
「失礼しました」
そのまま下がろうとした時、「あ、待って」と呼び止められた。
まだ何か注文があるのかと立ち止まる。
「少しお話しても大丈夫?」
由香さんは辺りを見回す。
ちょうどお客様もまばら。それを見計らって声をかけてきたようだ。
「少しなら」
何となく嫌な予感がしているのに気になって断れなかった。
「みんなの前でアナタにプロポーズしたんですってね、長瀬くん」
「えっ?」
「うちに来た時に話していたわ」
「あ、はい」
「交際期間もほぼ無いってほんと?」
あまりにもプライベートな話題にこのまま話をしていてもいいのかわからなくなる。
でもここで話をやめればきっとモヤモヤする。
「…はい」
「ふ〜ん」
不機嫌にに相槌を打つ。
「結婚する以前の要のこと、何も知らないで結婚したの?」
要?今、要って呼び捨てした?
「あの、何がおっしゃりたいのか…」
「本当に何も知らないのね」
そう言って呆れたような笑いを見せる。
「アナタ達が結婚する少し前まで、要は私と付き合ってたのよ」
「えっ?」
「だから、要と私は恋人同士だったの」
衝撃が走った。
要さんに過去の恋人がいても何もおかしくない。
三十歳を過ぎた男性なのだから。
けれど、こんな風に元恋人から告白されては、戸惑うし気分が悪い。