幼な妻だって一生懸命なんです!
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翌朝、だるさで体が痛い。
朦朧とする頭で、木の節が模様のように見える天井を見ると自宅ではないことはわかった。小さい頃からその模様を絵に例えるのが好きだった。
龍の目に見えたり、雲海に見えたり、眠りにつくまでそんな想像していた。
要さんのマンションに引っ越して一ヶ月も経っていないのに、白く高い天井が恋しい。
目頭が熱く感じると同時に、頭が割れるように痛かった。
「いたっ」
襖が開き、祖母が氷まくらを手に部屋に入って来た。
「熱が上がってるわね」
頭を持ち上げて氷まくらを入れた。
冷たくて気持ちいい。
ふと窓の外を見ると、すっかり明るい。
「おばあちゃま、今何時? いたっ!」
上半身を急に起こしたため、また頭がガンガンと鳴っている。
「急に起きちゃダメよ。今、八時よ。仕事は休みなさい。はい」
枕元に置いておいたスマホを渡され、欠勤の連絡を入れることを促される。
「はい」
スマホの画面に着信やメッセージを知らせる通知はない。
期待していたのに、要さんから一切連絡はなかったのだ。
がっかりしたのと、熱が上がっているのとで、とにかく会社に連絡を入れることだけして、また寝てしまおうと考えた。
八時にはまだ店舗には誰も来ていないだろう。
店長の番号に連絡する。
「結婚式の疲れも出たんだろう。こっちのことは心配しないでゆっくり休みな」
店長の優しい言葉が身に沁みる。
普段から感謝しきれないほどなのに、今日は一段と店長の言葉に感謝しっぱなしだ。
涙が出そうなほど。それほど心身ともに弱っていたのかもしれない。
それから店に出勤して来た菜々子さんからメッセージをもらったが、熱のせいで深く眠っていたため、気がつくのは夕方になってからだった。
それまで、うつらうつらとしながら、起き上がることができなかった。