幼な妻だって一生懸命なんです!
「後継者の座は誰にも渡したくないって言ってたのはどうして?それがあったから私と結婚したんでしょ?」
「美波?!」
二人の驚いた顔が飛び込んできたが、私はパジャマのまま、ボサボサの頭のまま、思いの丈をぶつける。
「後継者の座を俺がいつ渡したくないって言った?」
私が興奮しているのと反対に彼は冷静にいう。
「樹さんと、社長室のフロアで、二人が話していました」
要さんは少し考えてフッと笑った。
「ああ、あの時か。確かに言ったな。渡したくないって」
「やっぱり言ったじゃないですか!」
彼はまだ穏やかに笑っている。それがやたらとしゃくに触った。
なのに次に出た言葉で頑なだった心は簡単に溶かされていく。
「美波、お前のことだよ」
「えっ?」
彼が穏やかに笑う。
動けない私を「はいはい」と祖母がテーブルの前に座らせた。
「みーちゃん、今の話、ぜんぶ盗み聞きしてたわよね?」
祖母はにっこり笑いながら私を見た。
「…はい」
「なら、要くんがどうして今ここに居るかはわかっているわね」
「おおよそは」
「聞きたいことがあるなら、今聞いておきなさい。私は、買い物行ってくるわ。夕飯を食べたら二人とも帰るのよ」
祖母はゆっくりと立ち上がり「一時間くらいかな、買い物は」と言いながら出かけていった。