幼な妻だって一生懸命なんです!
「だって、その話をしようとしたら取り合ってくれなかったじゃないですか?彼女の名前を出すとはぐらかすようにして」
思い当たるのか、バツが悪そうに「ああ、ごめん」と謝る。
「あれはその、あーーーもう!」
急に大声を出してビクッとした。
「なんですか?!」
「中村はな、あ、一ノ瀬由香の旧姓ね。中村の狙いは樹だよ」
「はい?」
「入社当時は中村のことはほとんど知らなかった。どちらかと言うと川西とよく話していた方だな。川西と中村が仲が良くて、いつの間にか中村もよく話すようになっていた。しばらくすると誰でもわかるようなアプローチを受けて、なんとなくそう言うことになりそうになった時に言われたんだ。樹を紹介してほしいって。一気に目が覚めたな。新入社員の俺が樹に目をかけられていると思ったんだろうな、一緒にいることが多かったから。樹と従兄弟だって言ってないし、俺の家のことも言ってなかったし。樹にアプローチしたくて、俺に近づいて来たとわかったから、樹にそれを話した。ところが樹は色々と会社事情に長けていたから、彼女の素行を把握していたんだよ。彼女が金持ちを誘っていること。お得意様の社長や、個人経営者などから声をかけられるとそれに乗っていた。そんな噂が立つようになった時、いきなり輸入会社を経営している社長の一ノ瀬さんと結婚したんだ。妊娠して」
「へっ?」
「なんだ、そのあほヅラは。面白いな」
「だって、連れていた息子さんを要さんに似てない?って言ってたんですよ」
「一杯食わされたんだよ、中村はそんなこと朝飯前だ」
そんな悪女に騙されそうになったのは誰よ。と言うのはやめておいた。
「どこからか俺が高山グループの親族だって聞いたようで、最近、連絡が来ていた。無視していたら、美波にまでちょっかいを出して来たのは許せないな」
「じゃ、その、彼女とはシテないんですよね」
「シテねえよ」
半分、切れていた。
けれどそれがなんだか可愛くて。
「カッコ悪い話だろ?アプローチされて浮かれていたら、樹狙いだったって俺の黒歴史だ」
「ふふふ」
「笑うか?」
そう言いながら、私のほっぺたを軽くつねった。
でもすぐにその頰を大きな手で覆われる。