幼な妻だって一生懸命なんです!

「お待たせ」

スマートにスツールに腰掛けた。
一つに束ねていたロングヘアは仕事が終わると自然におろしている。
制服の三角巾をつけているので地味に見えるが、切れ長の目は日本独特の美しさがある。
今日は白シャツにスリムデニム、ヒールの低いパンプスでシンプルなファッションがかっこよくて私の憧れだ。
菜々子さんがビールを注文する前に、マスターが菜々子さんの前にジョッキを置いた。

「まだ頼んでない、それになんでジョッキ?」

少し不機嫌な雰囲気を出す。

「他のにするか?」

「ビールでいいけど」

毎度のやりとり。直人さんも横でクククと笑っている。
二人はこれで噛み合ってるように見える。

ビールを一口飲んだ菜々子さんがジョッキをコトンと置くと私の方を向いた。

「噂、回ってる」

もともと、クールビューティーで抑揚もなく淡々と話すことが多い。
喜怒哀楽の感情がイマイチわからない。
けれど一緒に働く時間が長くなるにつれ、彼女の言葉にはお世辞もないが、嘘もない。
回りくどい言い方もしない。単刀直入だ。


「はぁ、噂、ですか」

予想はしていたが、自分から言う前に菜々子さんの耳に入ってしまったことを残念に思った。
自分の口からその時の状況を報告したかった。
噂は本人や実際その場にいた人の気持ちを無視し、面白おかしく回るものだ。


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