クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
さっきまで色仕掛けだと心の中で息巻いていたのに、今は情けないほど緊張している。
それでも勇気を出して部長の顔を見上げた。
「泊まっていっちゃ、だめですか?」
少し震える声で精一杯のお願いをすると、彼は「ぐっ」とのどをつまらせた。
切れ長の黒い瞳が見開き私をじっと見つめる。
黙り込んだ部長がなにを考えているのかわからなくて、不安で涙目になってくる。
それでも『おねがいだから、うなずいて』と心の中で祈りながら彼を見上げていると、部長は私に背を向けた。
「いや。ご家族も心配するだろうから、送っていく」
部長は私の視線から逃げるように、目も合わせずに言う。
「でも、もう少し部長と一緒にいたいです」
服のすそをつかんだ手にきゅっと力をこめてお願いする。
けれど私の頑張りは、部長の心を揺らがせることもできなかった。