クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「どれか気に入ったものはあるか?」
部長の問いかけに、私は首を横に振った。
「どれも素敵すぎて選べません」
「遠慮しなくてもいいのに」
私が値段を見て息をのんだのに気づいたのか、部長が小さく笑う。
「遠慮しているわけではないんですけど……」
こんなに高額なものを買ってもらうのは申し訳ないし、急に選べと言われても心の準備ができていない。
「じゃあとりあえず今日は、仕事中も付けられるようなシンプルなものを買おうか」
私の戸惑いを感じ取ったのか、部長はそう言って店員さんに視線を向ける。
彼女は上品にうなずくと並んでいたエンゲージリングを下げ、カジュアルなデザインのものを持ってきてくれた。
「宮下は華奢だし手も小さいから、リングもシンプルで細めのものがいいよな」
並んだリングを見比べながらつぶやく部長の横顔をそっと盗み見る。
すっと通った鼻筋に薄めの唇。
うつむくと長いまつげが精悍な頬に影を落とす。いつみても綺麗な横顔だなとうっとりしてしまう。