クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「だから、そうやってじっと見ないでくれ」
降参だといようにこちらに背を向けた部長に、私は負けずに食い下がる。
「どうしてですか?」
「どうしてって」
部長は大きく息を吐きだすと、こちらに背中を向けたままぽつりともらす。
「……宮下にそんな顔で見つめられたら、照れるだろ」
ぶっきらぼうに言った部長の耳は、さらに真っ赤になっていた。
その赤さが彼の動揺の大きさを表しているようで、胸にいとおしさがこみあげてくる。
部長は責任感と出世のために私と結婚しようとしているんじゃないか。
ずっとそう思ってきたけれど、でももしかしたら……。
胸を打つ鼓動を感じながら、部長の背中を見つめる。
打算だけじゃなく、部長も私に好意を持ってくれているのかもしれない。そう信じたくなった。