クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
お店で部長が私の右手をとり薬指にそっと指輪を通してくれたときは、ものすごくドキドキした。
本当に部長と結婚するんだという実感がこみあげてきて、胸がいっぱいになった。
「この指輪、宝物にします」
胸の前で指輪のはまった右手を左手で包み込み力強く言うと、部長が目もとを緩ませこちらを見た。
「そういえば、合いカギ宝物にするって言ってたよな」
「合いカギも、ちゃんと大切にしてますよ!」
「宮下は、宝物がたくさんあって大変だな」
部長はこどもっぽい私の言動をからかうように、車のエンジンをかけながら肩を上げて笑う。
「だって、大好きな部長からもらったものは、全部大切な宝物です」
私が熱っぽく言うと、部長はちらりとこちらを見て眉をひそめた。
「あー……。またそういうかわいいことを言う……」
ため息交じりのつぶやきに私が首をかしげると、部長は「なんでもない」と言って車を発進させた。