クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました

 思わずふらついて体勢を崩すと、たくましい腕に抱きとめられた。

「大丈夫か?」

「ご、ご迷惑をおかけして、すみません……」

 声を震わせながら謝ると、頭上から優しい言葉が降ってきた。

「迷惑なんかじゃない。宮下が無事でよかった」

 心から安堵したような部長のつぶやきに、胸がいっぱいになる。

 安心感と一緒に涙がこみあげてきて唇から嗚咽がもれた。
 私がひっくひっくとしゃくりあげていると、部長は困惑したようにため息をつく。

「もう大丈夫だから、泣くな」

 道端で泣く私を、通り過ぎる人たちが不思議そうに見ていく。
 これじゃあまるで部長が私を泣かしているみたいだ。

 私が泣くと部長を困らせる。
 わかっているのに、一度あふれた涙は簡単には止められなかった。

 必死にこらえるようとすると、うまく呼吸ができずに肩が震える。

 そんな不器用な私を見て、部長は「あー……」と戸惑ったようにつぶやいた。

「涙を拭いてやりたいけど、ハンカチを持っていないから」

 部長はこちらに手を伸ばし、恐る恐るといった様子で私の頭をなでた。
 そして、泣き続ける私の頭を自分の胸の中に抱く。

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