クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「じゃあ、そろそろ家まで送っていく」
まだ夕方なのに。
車の外の景色を見るふりをして、私はがっくりと肩を落とす。
こうやって指輪を買ってくれたり優しくしてくれるのに、一向に手を出してこないのは私に魅力がないからだろうか。
千波さんは色仕掛けよとアドバイスをくれたけど、具体的にどうすれば大人の彼を誘惑できるのか見当もつかなかった。
しょんぼりしながら鼻をすすっていると、部長に「どうした?」とたずねられた。
私は慌てて首を横に振る。
「いえ。なんでもないです!」
「本当に?」
疑うような視線に、私は話題をかえてとりつくろう。
「そういえば、本当に部長のご実家に挨拶に伺わなくていいんですか?」
私の言葉を聞いて、部長の表情があきらかに曇った。