クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「宮下……」
「突然おしかけてすみませんでした。失礼します」
彼の言葉を待たず、玄関のドアを開け外に出る。
涙をこらえながら、前を向いて歩いた。
下降するエレベーターに乗り階数を表示するインジケーターを見上げているうちに、じわじわと怒りが込み上げてきた。
部長はなにも教えてくれなかった。
それはものすごくショックだけど、だからってこのまま自宅に帰ってベッドの中でメソメソ泣くなんて馬鹿みたいだ。
父や兄、常務や部長が水面下で争っているのに、私だけ蚊帳の外で放っておかれるなんて納得いかない。
思いきり鼻をすするとバッグからスマホを取り出した。
連絡先の中からお目当ての人物の名前を探し出し電話をかける。