クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました

『もしもし? 遙ちゃんが電話をかけてくるなんて珍しいね。なにかあったのかい?』

 幸いすぐに相手は電話に出て、ご機嫌にそう問いかけてくる。

「久住常務。すみませんが、お伺いしたいことがあるんです。少しお時間いただけませんか」

 私が電話をかけたのは、常務だった。彼は『もちろんいいよ』とふたつ返事で了解してくれる。

『ちょうどいまなじみの店で飲んでいるから、遙ちゃんもおいで』

 電話の声がご機嫌だと思ったら、お酒が入っているらしい。
 お店の名前と住所を教えてもらい、電話を切る。

 部長が教えてくれないなら、常務から聞けばいい。
 そう考えた私はさっそくタクシーでお店へと向かった。

 私は別に父と兄に反旗を翻した常務と部長の魂胆を暴いて失脚させたいわけじゃないし、どちらかに加担したいわけでもない。

 もし今はそれぞれ意見が違え対立していたとしても、自分の立場や利益のためだけに動くような人たちじゃない。

      
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