クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「人生をめちゃくちゃにされたのは、あなたじゃなくてあなたにむりやりセクハラをされた女性たちのほうです! 被害者の女性たちがどれだけ怖くてどれだけ苦しんだのか、わからないんですか!?」
「被害者っておおげさだろ。大人同士なんだから、ひと晩だけ割り切ってお互いに気持ちよくなってお仕事も円満に進んで。利害の一致ってやつじゃん」
身勝手な主張に言葉をなくす。
嫌悪感がこみあげてきて体が震えた。
すると、桑井さんがつかんだ私の腕を力任せに引き寄せ、顔を近づけた。
「俺はうまく立ち回ってきたのに、お前のせいですべて台無しだよ。銀行の役員の叔父さんにもすげぇ叱られて縁を切られて、実家からも勘当されて。お前、どうやって責任とってくれんの?」
吐き出した息がお酒臭くて顔をしかめる。
桑井さんはそうとう酔っぱらっているようで、視線がさだまらず目はよどんでいた。
その異常な様子に身の危険を感じる。
どうしよう、逃げなきゃ。
そう思い腕を掴む手を振り払おうとしたとき、後ろから足音が近づいてきた。