クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「桑井、どうしたー?」
間延びしたけだるそうな口調に顔をあげると、ガラの悪そうな男たちがふたりこちらに近づいてくる。
「あ、いいところに来た。こいつ俺が銀行をクビになった原因を作った女。宮下不動産の社長令嬢だぞ」
桑井さんは私の腕を掴みながら男たちに向かって言う。
「まじで。かわいいじゃん」
「宮下不動産っていったら、超金持ちのセレブだろ」
「俺たちにもちょっとお小遣いくれよ」
アルコールのにおいがする息を吐きだし舌なめずりする男たちに恐怖で青ざめていると、桑井さんが鼻で笑った。
「バカだな。はした金もらって満足してどうすんだよ。こういう金持ちの女は、弱みを握っておどしてとことん搾り取るんだよ」
私の腕を掴んだ指に容赦なく力をこめられて、私は痛みと恐怖で顔をゆがめた。
このままじゃ、どこかに連れ去られてしまう。そう思った私は思いきり息を吸い込み叫ぶ。
「誰か、助け――……」
けれどその声はすぐに口をふさがれかき消された。
「黙ってろよ!」
そう怒鳴られると同時にガツンという衝撃を感じて、目の前が暗くなった。