クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 それは、できれば遙には知られたくない問題だった。
 社長と真一、そして俺と常務の間だけで納めておきたかったのに。

 俺が言いよどんでいると、遙は決意を固めたように背筋をのばしこちらを見た。

「すみませんが、部長との結婚のお話はなかったことにさせてください」

 突然の彼女からの婚約破棄の申し出に、信じられなくて目を見開く。

「え……?」

「真実を話してもらえないまま、結婚なんてできません」

 その言葉が胸に深くつき刺さり、容赦なく心をえぐった。

 俺が呆然としている間に、遙は「突然おしかけてすみませんでした。失礼します」と頭を下げると振り返りもせず部屋を出ていく。

 遙に嫌われた……。

 ばたんと目の前の扉が閉まると同時に、絶望で目の前が真っ暗になった気がした。
          
 
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