クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「大丈夫です。冷たくてびっくりしただけ」
部長はほっとしたように肩を下ろし、また私の頬にタオルを当ててくれた。
彼の視線や指先、行動のひとつひとつから私を大切にしてくれているのが伝わってくる。
「部長こそ大丈夫ですか?」
私がたずねると、部長は「ん?」と視線を上げた。
タオルを持った部長の右手にそっと自分の手を重ねる。
私を助けるために人をなぐった拳は赤くなっていた。
「このくらい、なんでもない」
静かに首を横に振った部長に、疑問が口をついてでる。
「部長はなんであんなに強いんですか?」
もしかして、普段からああやってケンカをしていたり……? なんて思っていると、部長は私の考えを見透かしたように小さく笑う。
「学生時代は空手をやっていた。一応段を持っているから普段は素人相手に手を出したりはしないけど、今回はさすがに手加減できなかった」
空手の有段者……。そうつぶやいてごくりと息をのむ。