クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「ちょっと躓いただけで、酔っていませんから」
本当は今すぐこの場にしゃがみこみたいくらいふらふらしていた。
だけど、必死に強がってなんとか平静を装う。
「へぇ。あれだけ飲ませたのにまだ酔ってないんだ。おしとやかなお嬢様って感じなのに、見かけによらず強いんだね」
「そ、そんなことは……」
普段から好んでお酒を飲まない私。
二十四歳にもなってなさけないけれど、こんなに飲んだのは生まれてはじめてだ。
今の私は、酔っているところをこの人に見せたくないという緊張感で、なんとか正気を保っている状態だった。
「渡さなきゃいけない書類を部屋に取りにいくだけだから、とりあえずついてきてよ」
さっきから何度も断っているのに、まったく話を聞いてくれない桑井さん。
本当に部屋に書類があるのか、それとも私を誘うための嘘なのか。
酔いが回ってふわふわした思考では、それを判断するのはむずかしい。