クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「忘れていたのは宮下のほうだろ? 会社で再会したときに『はじめまして』って」
「それは、部長が私を見て黙り込んだので、きっともう覚えていないんだろうなと思って……」
私がそう言うと、部長は「あー……」とつぶやいて額に手を当てた。
「なんだ、ちゃんと覚えていたのか。昔はあんなに俺を好きだと言っていたのに、宮下に『はじめまして』って挨拶をされて、けっこうショックだったんだからな」
こちらを睨む表情がなんだかすねているように見えて、胸がきゅんとした。
「じゃあ、どうして部長は私を見てなにも言わなかったんですか?」
「それは……。見とれてたんだよ」
「え?」
「中学生のころの子犬みたいに愛らしかった宮下が、大人になってすごく綺麗になっていて、動揺して言葉が出なかったんだよ」
顔をそらして言った部長の耳は赤くなっていた。